むくげ通信203号/2004年3月

研究レポート/韓国の便宜店(コンビニ)について(1)

山根 俊郎

(※図表は省略しています。文中、ハングルの部分が文字化けしています。)

 

はじめに

私たち「むくげの会」は、インターネットのヤフー(YAHOO!JAPAN Groups)にメーリングリストを開設している。飛田さんがオーナーになり、99年11月28日に作られた。

 

グループの説明:朝鮮の歴史・文化・言葉を勉強するサークル「むくげの会」(神戸)のメーリングリスト。当面は2ヵ月に1回の「韓国グルメの会」の案内用??

 

私も去年(03年)10月に加入した。もちろん無料である。会員数は29名であり、むくげの会員の大半と元会員およびその周辺の有識者とゲストデイに来られた若手研究家たちである。

ますます高齢化する「むくげの会」の運営や会のあり方にも良い方向性を示唆する起爆剤になっている。

とにかく、アクセス数がとても多い。

03年10月=57件、11月=94件、12月=72件、04年1月=142件、2月=154件、3月=57件(3/28 am8:43現在)

 

そこでは韓国、北朝鮮、在日に関する多様な話題が満載である。私がからんだのは李泳禧先生の講演会の内容の紹介や韓国のTV、ラジオ,音楽、映画「実尾島」やネットショッピングのカード決済方法などである。

 

コンビニは、便宜店と呼ぶ

なぜ、今回の私のメインレポートのテーマが、「韓国の便宜店(コンビニ)」に決まったのか?

それを知るための重要な手がかりが、山根から堀内さんに送った一通のメールに隠されていた。(  )のハングルは、今回山根が加筆した。

 

2月24日pm11:43

堀内さま。山根です。先週のむくげの会の後で飲みに行きしなに興味深いお話をされていましたね。「韓国と日本では、外来語の取り扱い方が異なる」というお話だった、と記憶しています。

私は、最近日本では「鳥類インフルエンザ」を韓国では「チョル(鳥類) トッカム」(??   ??)と報道しているのは知っていました。それ以前にも韓国のTVニュースで「インフルエンザの予防注射」を「トッカムの予防注射」と呼んでいました。「トッカム」とは、漢字語であり「毒の感」つまり辞書によると@悪性の感冒、Aインフルエンザと載っていました。さて、堀内さんの学説は、なんだったでしょうか?

酒を飲んで忘れてしまいました。教えてください。

 

2月25日am7:22

堀内です

学説ではないですが、私がいいたかったのは、

アンケート、コンビニ、プリペイドカード、ディスカウントショップ、タブーなど、日本ではカタカナを使う単語が、韓国では漢字語になっている例が多いということです。なぜそうなのかの解明は別にして、こうした例をもっと集めてみるのもおもしろいですね。

 

2月25日pm8:56

堀内さま。山根です。

事例としては多いのがよく分かりました。コンビニは、便易店(ピョンイチョム・???)、ディスカウントショップは、割引店(ファリンジョム・???)、タブーは、禁忌(クンギ・??)だと思いますが、アンケートは、設問調査(ソルムンチョーサ・?? ??)でしょうか?プリペイドカードはどう表現するか分かりません。教えてください。よろしくお願いします。

 

2月25日pm10:29

堀内です

プリペイドカードは定額券(???)だったとおもいます。

ついでに、リストラは構造調整(?? ??)、セクハラは性戯弄(???)、ボランティアは自願奉仕(?? ??)でしょう。

リストラの場合は、リストラ=首切りのイメージが強い日本のニュアンスとは少し違うかもしれませんが……。

 

2月25日pm10:39

堀内さま。山根です。ありがとうございます。まだ、起きていたのですね。

ところでリストラは、名誉退職(?? ??)ではないでしょうか?

あと、ホームレスは、露宿者(ノスクチャ・???)がありました。

 

この韓国の漢字語に関する話題は、ソウルに住む梁(高原)知愛さんから返事をいただいた。

 

2月26日am10:20

定額券(チョンエックォン)は地下鉄でのみ使えるラガールカードのようなものです。学生証を提示すれば割引がありますが。1万Wで1.2万W分乗れます。あと、最後の1回分の残額は、100Wであろうが10Wであろうが、地下鉄の範囲内ならどこまででもその残額で最後の1回乗れます。プリペイドカードはソンブル(先払・??)カードではないでしょうか。

私はコンビニを便利店でピョニチョムだと思っていました。

 

また、2年間ソウルで日本語を教えていた中西智子さんは、「便宜店」と断定された。

 

2月26日pm3:39

はじめてメール送ります。コンビニは「便宜店」(ピョニヂョム)ではないでしょうか。

 

山根は「便易店」(ピョンイチョム・???)、梁(高原)知愛さんは「便利店」(ピョニチョム)中西智子さんは「便宜店」(ピョニヂョム)とそれぞれ主張した。

調べてみると、中西智子さんが正解であった。韓国では、コンビニを便宜店(ピョニヂョム・???)と呼んでいる。なお、台湾・中国は「便利店」と呼んでいるようである。

 

便宜店の誕生

では、韓国では、いつ頃に便宜店が誕生したのであろうか?

それは、ソウルオリンピックの年である1988年5月21日に(株)コリアセブンが創立して、セブン-イレブンの1号店が翌年の1989年5月にソウルのオリンピック選手村が払い下げられたオリンピックファミリーアパート内にオープンしたのが最初であった。

その後、91年までにローソン、サークルK、LG25、AMPM、ファミリーマート、ミニストア等7社が相次いで創業した。

 

現在は、韓国の全国で7,302店があり、その内ソウルには1,625店が集中している。

最初は、当然ながらソウルで店舗数を伸ばし山を越えて嶺南地方(慶尚道)に拡大した後、済州道に及び、最後に江原道に到達している。 これは、韓国の道路事情と関連している。コンビニといえば、新鮮さが命である。食品の賞味期間を厳守するならば、地方に流通センターを作り、早い時間に店頭に並べなければならないからである。

 

便宜店のビッグ3

1位 ファミリーマート(2,208店)04.1.31現在

2位 LG25(約1,600店)03.11.20現在

3位 セブン-イレブン(1,325店)03.12.31現在

がビッグ3を形成しており、熾烈な競争を繰り広げている。それを

4位 ミニストップ(875店)04.1.31現在

5位 BUY the way(720店) 03.12.31現在

が追いかけている。

 

便宜店の概念

YAHOO!コリアの国語辞典で「便宜店」を検索したら次のような説明があった。

 

??-?(便宜店)[発音=??-/??-] 名詞

食料品や雑貨などを買おうとする顧客の便宜のために夜昼に営業する店。

 

また、YAHOO!コリアの百科辞典で「便宜店」を検索したら次のような説明があった。

[ ]内は、山根の説明である。

 

???[発音=ピョニヂョム] 便宜店(CONVENIENCE STORE)

概要:便利さ(CONVENIENCE)を概念に導入した小型小売り店舗。

 

内容:主に駅周辺・道路沿いなど利用に便利な所に立地して長時間営業を行い、店舗によっては、年中無休24時間営業体制で生活必需品を販売する店舗もある。共働き夫婦・独身者など比較的目的購買の性向が著しい顧客をターゲットにしてアメリカで始められた。

 

1989年中半に韓国に導入された便宜店は、アメリカ人たちの便宜志向の生活方式が生んだ総合小売り業の革新的形態である。アパート[日本ではマンション]の密集地域や人と車両の通行が多い場所で、消費者が各種生活用品をたやすく購入できるように長時間営業する方式を採っている。

 

便宜店は、アメリカ式のCVS[CONVENIENCE STOREの略字]とヨーロッパ式のSPARがある。CVSが、24時間営業体制であるのに対して、SPARは午前7時〜夜11時までである。CVSは、現在アメリカ全域にビッグ3社と呼ばれるサウスランド社・デオリマート社・サークルK社等で2万余店舗がある。日本には4万5000余ケ所の便宜店が営業している。一方、SPARはオランダに本部を置き世界中に3万余りの店舗を開いている。

韓国には89年同和産業が、サウスランド社と提携してセブン-イレブンを開設したのに続きローソン・サークルK・LG25・AMPM・ファミリーマート・ミニストア等がやつぎばやに開設され、便宜店ブームを起こしている。普通25〜40坪が基準であり、25〜35才の年齢層が主な顧客となっている。

 

日本のコンビニのビッグ3

韓国の便宜店ビッグ3を論じる前に、まず日本のコンビニ(コンビニエンス ストアの略)のビッグ3を見てみたい。なぜなら韓国に進出して成功した会社もあるし失敗した会社もあるからである。日本のコンビニは、すべてがアメリカ資本から出発している。

 

1位 セブン-イレブン(10,120店)03.12.31現在

2位 ローソン (7,625店)03.2.末現在

3位 ファミリーマート(6,136店)04.1.31現在

4位 サンクスアンドアソシエイツ (3,270店)

03.2.末現在

5位 サークルK (2,971店)03.3.1現在

6位 ミニストップ (1,632店)04.1.31現在

なお、4位 サンクスアンドアソシエイツと5位 サークルK は、04年9月1日に合併予定であり、合併後の株式会社サークルKサンクスは、業界3位の6,241店に躍り出る。

 

韓国の順位(店舗数のみ)と比較すれば以下のとおりである。

@日本の1位 セブン-イレブンは、韓国では3位に甘んじている。

A日本の2位 ローソン(当時250店舗)は、00年1月1日にセブンイレブンに吸収された。最近は、ノレバンとPCバンのチェーン店ローソン21として再生をめざしている。

B日本の3位 ファミリーマートは、韓国では堂々1位である。

C日本の5位 サークルK(当時280店舗)は、01年頃に不振店は売却されて、残りはハンファが直営するシースペイスに編入された。  D日本の6位 ミニストップは韓国でも中堅。

 

韓国の便宜店の歴史

韓国のファミリーマートのホームページに興味

http://www.family-mart.co.kr/

(3月28日現在、私のパソコンではアクセスできない)深い記事があったので紹介する。

「韓国便宜店の成長(成功)」作成者=fmmaster 登録日=2003.04.02

[ ]内は、山根の説明である。

 

1.導入期(1989〜1991年)

1989年5月に国内チェーン化便宜店1号店が開店して、この期間中に8ケ[セブン-イレブン、ローソン、サークルK、LG25、AMPM、ファミリーマート、ミニストア]のチェーン運営社が便宜店市場に進出した。

導入初期にはソウルを中心に首都圏地域に3年間で総279ケ店舗が開設されて、277ケ店舗が運営された。

店舗にはPOSシステム[point ofsalesの略。販売時点情報管理システムのこと。販売時点のデータを自動読み取り方式のレジスターで処理するしくみ。売れ筋商品を的確につかみ、販売機会の逸失を防ぎ、仕入れ、売り上げ、在庫情報の一元化で合理的な運営が可能になる]および明るく清潔な売り場の雰囲気で現代化された新業態の登場を消費者に知らした。チェーン本部は、物流および電算システム等を準備してチェーン事業を準備した時期であった。

 

2.チェーン網構築期(1992〜1994年)

各チェーン社たちは、本格的にチェーン網の構築に打って出て、出店数が多く増え始めた。92年度には首都圏以外の嶺南地域にまで出店が拡散されて100号店舗を突破した会社が4ケ社[セブン-イレブン、LG25、 ファミリーマート、あと1社不明 サークルK?]になった。

特に93年度は、業種間の出店競争が過熱する様相を呈して史上最大の715ケの店舗が出店された。

1000店舗の突破も4年2ケ月で達成されたが、これは日本よりも1年間早い出店速度であった。

チェーン網が急速に拡大された時期であった。

 

3.システム整備期(1995〜1997年)

大体的にプランチャイズシステムについて修正と補完そしてチェーン網の質を高めるためにチェーン網の再構築に力を注いだ時期であると見ることができる。

また、経営効率を高めるために革新プログラムと組織のスリム化等の構造調整も進行させながら黒字基盤の造成に努力してチェーン本部の投資費の削減のための委託加盟店数も大きく増え始めた。

96年度にはファミリーマートとLG25が、便宜店業界で最初に黒字経営を実現して、97年度には国内導入8年目にして2000号店を突破したのと同時に総売上げ1兆ウオン市場を実現した。

 

4.高度成長の基盤造成期

(1998〜2000年)

IMFの影響で98年度は、便宜店の国内導入10年間で初めて店舗規模‘0‘成長と売り上げ(−)成長という危機に瀕したが、その後は、内実経営の成果により99年下半期から少しずつ回復した。

99年度には、前年対比で売り上げが4.2%伸びて店舗数も13.5%成長した。

一方、21世紀の新しい経営環境に備えて全面的にシステムを補完しながら新しい跳躍を準備した。

 

2000年度は、売り上げ22.9%、店舗数20.8%の成長率を見せて黒字会社の経常利益が大きく増えた。また、ATMの店舗設置および公共料金納付の代行等の生活便宜サービスが拡大されて、便宜店市場に対する評価も高くなった。

便宜店業界は、今やこのようなインフラを基盤にして、今後10年間の高度成長期への進行が展望されている。

 

韓国の独自ブランド LG25

韓国の便宜店業界で店舗数2位の LG25(発音はエルジー イーシボ)は、「売り上げは1位である」と主張して盟主の貫禄で躍進している。

http://www.lgmart.co.kr/lg25/main.asp

 

ホームページの「紹介」欄には次のように書いてある。

 

わが国に便宜店が導入されて13年、国内便宜店市場は、国外に多くのローヤルティーを支払っている外国ブランドが大部分である現実のなかでLG流通のLG25は、国内独自開発ブランドとして大韓民国を代表する便宜店として成長してきました。

LG25は、LGと24時間サービスに1時間をいっそうするという顧客精神と幸運の数字7(2+5)を構想する意味を込めたものです。今後LG25は顧客が信頼して信じられる国内最高、世界の中のブランドとして発展するつもりです。

 

店舗数の拡張を「沿革」等により作成した。

 

90.12  1号店 慶熙店開店

92.8   100号店 達成

93.   200号店 達成

97.   400号店 達成

98.5  500号店 達成

02.09  1000号店 達成

03.11.  1600余店( 03.11.20付け「毎日経済新聞」の記事による)

05年には、2500号店 達成と売り上げ2兆ウオンの計画を建てている。

 

インターネットの「empas」の知識検索欄01.10.10付け回答にLG25とファミリーマートの激しい抗争についての記事(出典不明98年頃の状況)があった。

 

LG流通(代表:姜末吉)のLG25と普光ファミリーマート(代表:呉カンヨル)のファミリーマートは、国内便宜店業界の開拓者であり永遠のライバルである。

熾烈な競争関係にありながらも国内便宜店業界を牽引する二頭立て馬車とも言える。

国内に便宜店という新しい業種を取り入れたのは世界的な便宜店のチェーン店のセブン-イレブンであるが、便宜店文化を定着させて根付かせたのは、この二つの会社である。

そのため競争者の関係よりも同伴者の性格でもある。便宜店業界の性格上、一般製造業とは異なり相互補完的な側面が強い。相手の市場を奪うよりも自身の市場を新たに創出して、新しいサービス競争を起こす点でこの二つの会社は、国内便宜店業界の発展の原動力になった。

LG25とファミリーマートが便宜店事業に参入したのは、90年の12月と10月であり、店舗数は500ケと490ケであり差が10ケしかない。

昨年(97年)の売り上げも2,700億ウオンと2,500億ウオンでありLG25が、わずかにリードしている。

 

LG流通に見る新しいシステム

従来の韓国の小売業は、クモンカゲ(????)と呼ばれる日用雑貨店があった。大抵は中年の夫婦がやっていてTVを見ている。

店頭には、緑色の公衆電話が置いてあった。(2年前に釜山に行った時に公衆電話が撤去されて木の台だけが所在なげに残されていた)

街には、在来市場(チェーレーシジャン・????)と呼ばれる市場が細い路地を挟んで小さな店がひしめき合っていた。

主婦たちは、毎日、買い物籠(シジャンパグニ・?????)を下げて市場に行き「高いわ。安くしてよ」と値切り(エヌリ・???)を楽しんだ。

田舎では、五日市(オシジャン・???)が立ち、天幕を張って服などを売った。

ソウルには問売市場(トメシジャン・????)と呼ばれる問屋の市場が繁盛した。

同じ業種がひとつのブロックに固まっているのがソウルの特徴である。私は、70年代にレコードを買いに清渓川3街の問売商(トメサン・???)に通ったものである。

南大門市場や東大門市場は、衣料の問売市場として発展した。

しかし、高級感を味わえるのは、百貨店(???)であった。ロッテ、新世界、現代百貨店のビック3は今も、揺るがない。

そのような在来の小売業に対抗して

便宜店=商品数 2,000点

スーパーマーケット=商品数 7,000点〜8,000点

マート(大型割引店)=商品数 40,000点

面積2,000坪以上

が、90年代に整備された。

割引店(ファリンジョム・???)は、日本でのディスカウントショップに相当する。ビールは、ダンボール箱単位で売っている。

 

便宜店 ― スーパーマーケット − マート − 百貨店 という新しい事業形態を一本化したのがLG流通である。

 

韓国の消費文化を革新させたのがLG流通である。ホームページは、LG25のホームページから展開する。

http://www.lgmart.co.kr/LGMartcorp/about/about_intro.asp

 

「紹介」「沿革」による。

(株)LG流通は、1971年2月に前身の金星通信工事株式会社が創立された。

2002年7月に(株)LG流通と(株)LGスーパーセンターと(株)LG百貨店の3社が統合されて(株)LG流通になったのが大きな転機になったようである。

 

LG流通は、1971年の創立いらい常に国内流通産業の現代化の先頭に立っています。

顧客と社会のニーズの変化に答え自身の革新と進化を進め名実ともに総合流通企業として国際的競争力と先進システムを構築しつつあります。

LG流通は、4ケの事業分野で成り立っています。

LG25 (便宜店)、LGスーパーマーケット(66店)、LGマート(8店)、LG百貨店(富川・九里・安山の3店)事業がそれであります。

 

次回は、「三角のリ巻き」など便宜店の人気商品についてのべます。(続く)

 

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