『むくげ通信』172号(1999年1月)

時評/入管法、外登法の改定をめぐって
飛田 雄一(ひだ ゆういち)

 出入国管理及び難民認定法(入管法)改定の動きが時々ニュースとなっている。たとえば、昨年10月3日の記事は次の通りだ。
 不法滞在規制へ入管法改正を指示〜中村法相/ 中村正三郎法相は2日の閣議後の記者会見で、不法入国者の取り締まり強化のため「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の改正を、事務当局に指示したことを明らかにした。法相は「不法入国するより、滞在している方がもっと悪い」と述べた。 来年の通常国会での成立を目指す。
 また、昨年、決算行政委員会の提出した「出入国管理法違反に係る課題」では、「密入国事件等への対応体制の整備」「外国人犯罪の取締まり体制の充実」「麻薬等の取締り強化対策」等について述べたあと、以下4点の改定内容をあげている。
@「不法滞在罪」の創設等
A退去強制後再入国の期間の長期化
B退去強制費の負担者
C刑事事件の証人となる不法滞在者への適切な対策
 @は、不法入国については時効がある(実際は外国人登録未登録の罪がある)ので「現在の不法入国の現状に、一層厳格かつ適切に対応するためには、新たに『不法滞在罪』を創設するなどの対策が必要である」として更なる罰則の強化をねらっている。
 Aは、現在、退去強制後1年で再入国が可能である状況の「改善」のねらって「再入国できることになる期間を1年から、より長期間に延長する必要がある」とのことだ。
 Bは、退去強制をスムーズに進めるために本人が飛行機代を支払えない場合に母国に負担させて退去させたいという考えだが「この費用負担については、国際的な慣例もあると考えられるので、この面からの調査検討も必要である」と慎重な?態度をとっている。
 Cはよく分からない点もあるが、刑事事件の検察側の証人となる外国人がオーバーステイの場合に「捜査段階で強制退去を恐れて逃亡してしまうことが多いこと」等行政当局が痛し痒しと思っていることをなんとか解決したいということではないだろうか。
 まだ、法案が提出されていないので具体的な内容をつかむのは困難であるが、おもにニューカマーといわれる外国人を対象とした管理強化を狙うものだということはまちがいない。
 そして例えば@については、すでに外国人登録法違反で罰することができるので禁止しされている二重の刑罰にあたるという批判もなされている。また、Aに関して一度退去強制された外国人がもう一度「新しいパスポート」を持って入国してきたときに実際に判別が困難であろうという意見もでている。
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一方でこれも新聞報道がなされた外国人登録法の改定問題がある。
 1998年11月13日に自民党政調会法務部会で了承を得た改正骨子は、次の6項目である。(入管局登録課長山神進「外国人登録法の改正作業の現況等について」(『外国人登録』478号、1998.12)
@非永住者に対する指紋押捺制度の廃止
A都道府県の機関委任事務の廃止
B登録原票についての一定範囲の開示制度の新設
C永住者に係わる登録事項の一部削減
D永住者等に係わる登録証明書切替機関の伸長(5年→7年)
E居住地変更とうに係わる代理申請範囲の拡大
 @は、1980年代の指紋押捺反対運動の結果として16歳の時の一回だけ、永住者は免除と改正されてきて、今回は全面的に廃止するというもので、これが今回の改定の目玉になっている。特にこの点については反省することろがあるのか「諸外国をみましても、同一人性の確認のために外国人からだけ指紋の押なつを求めることとしている例はほとんどないこと、地方公共団体から事務の合理化のためにも指紋押なつ制度の廃止を求める強い要望が出されていることも踏まえ」とその理由を説明している。
 もちろん廃止は望ましいものだが、これも現在法務省が力を入れているニューカマー外国人の管理強化という点からは指紋押捺制度が実効性をもたないということだ。なぜなら一年以上滞在する外国人に義務として科している指紋押捺制度は、不法滞在等の可能性のある外国人からは採取する根拠がなく、もはや必要がないものなのである。まさに、私たちが指紋押捺裁判で主張したように指紋押捺制度は「過去の遺物」であるということを証明したことになる。
 Aは都道府県経由の事務を廃止しすることだが、市町村が直接機関委任事務を行なうことの是非については論議をよぶところだ。指紋押捺拒否運動のときに法務省あるいは都道府県の指示に従わない市町村が多くでたことへの反省?から直接的な市町村管理を狙っているのでは、というのは私の勘ぐりすぎだろうか。
 B〜Eはそれなりの説明がなされているが、外国人の負担の軽減をその理由としながら行政費用の軽減を狙ったものでしかない。ことさらその点について反対する理由はないと私は考えている。

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 いまや日本は、難民条約・人種差別撤廃条約等を批准して世界の人権基準に合わせなければならなくなっている(いまだに批准をしぶっている条約もあるが‥‥)入管法改定Aなどは家族の離散を強いるもので国際的な人権基準に合致するものではない。先の『外国登録』で山神氏は国連人権委員会での外登証常時携帯義務についての「委員会は、そのような差別的な法律は廃止されるべきであることを再度勧告する」という最終見解についても次のような抵抗を試みている。
 「なお、最終見解(Concluding Observation)の性格についてあえて言えば、審査を終了する(conclude)に当たっての全般的な所感(observation)とも言うべきものであり、最終見解という日本語の語感と内容が必ずしも一致していないようにも思われる」。
 在日外国人の人権伸張をめざす動きは近年めざましいものがある。日本政府・法務省は一生懸命に抵抗しているが、それも無理な21世紀になっていくものと思われる。そのようになるように努力をつづけたいものだ。 

(※本年1月23日の私も参加した移住労働者と連帯する全国ネットワークでの議論、古屋哲(RINK)、渡辺英俊(カラバオの会)両氏のレポート等を参考にさせていただきました。)

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