その他の活動

センター出版部とロビー書店、そしてフェアトレードグッズの「なんやか屋」

セミナーの内容を知りたいとの要望が参加者以外の人たちから寄せられ、セミナー講演録として出版した最初の本が梶村秀樹著「解放後の在日朝鮮人運動」(1980年8月)であった。好評で初版1,000部を短期日に売りつくし、現在まで7刷計7,000部を出している。その後、セミナーの記録として、「在日朝鮮人の民族教育」「現在の在日朝鮮人問題」「医と食と健康」「今、子どもに何が起っているか」「もっと減らせる!ダイオキシン」「賀川豊彦の全体像」「教科書検定と朝鮮」「医と食と健康」「朝鮮近現代史における金日成」「体験で語る解放後の在日朝鮮人運動」「児童文学と朝鮮」「天皇制と朝鮮」「朝鮮統一への想い」を出した。

セミナーの記録以外に、「母・従軍慰安婦」「指紋制度を問うー歴史・実態・闘いの記録―」「殺生の文明からサリムの文明へ―ハンサリム宣言 ハンサリム宣言再読―」「サラム宣言―指紋押捺拒否裁判意見陳述―」「地震・雷・火事・オヤジ-モッちゃんの半生記」「歴史を生きる教会-天皇制と日本聖公会」「朝鮮人・中国人強制連行強制労働資料集」「朝鮮人従軍慰安婦・女子挺身隊資料集」「国際都市の異邦人・神戸市職員採用国籍差別違憲訴訟の記録」「日韓の歴史教科書を読み直すー新しい相互理解を求めてー」「三・一独立運動と堤岩里教会事件」「アボジの履歴書」「<未完>年表日本と朝鮮のキリスト教100年」「歌劇の街のもうひとつの歴史―宝塚と朝鮮人」「在日朝鮮人90年の軌跡-続・兵庫と朝鮮人-」「朝鮮人強制連行とわたし川崎昭和電工朝鮮人宿舎・舎監の記録」「夏は再びやってくる―戦時下の神戸・オーストラリア兵捕虜の手記-」「風は炎えつつ」「戦時朝鮮人強制労働調査資料集」「同2」「「明治日本の産業革命遺産」と強制労働」を出版した。

センターにある印刷製本を自動的にする印刷機・リソーグラフを利用した冊子の発行も好評である。「南京事件フォト紀行」「生徒と学ぶ戦争と平和」「国産大豆で、醤油づくり」「自給自足の山村暮らし」「朝鮮人強制労働企業 現在名一覧」「阪神淡路大震災、そのとき、外国人は?」「2017年通常国会における改憲論議―転換点としての5月3日」「<資料集>アジア・太平洋戦争下の「敵国」民間人抑留―神戸の場合―」など。

売れ行きに応じて増刷する方式(オンデマンド)で、不良在庫を抱える心配がないのがメリットだ。

センター出版部への依頼もあり、「牧会五十話」「信徒と教職のあゆみ」も出した。出版部のほとんどの本は、Amazonで購入できるようにしている。センター来店で購入の場合は消費税なし、郵送希望の場合は送料分180円+送金手数料、Amazonの場合はそれが不要だ。(手間のことも考えてアマゾンでの購入に誘導している?)

ロビー書店(一坪書店)は、朝鮮史や在日朝鮮人の人権問題の基本図書をそろえる必要から、1985年9月にスタートした。セミナーの主題に合わせて食品公害関係のものも集めたが、これらの関係書を集めている書店が少ないことから利用者に喜ばれている。ミニコミ誌も一部扱っているが、すべて取次店を経由せず、出版社や発行元から直接仕入れる方式を取っている。もちろん、神戸学生青年センター出版部の本はすべて販売している。

またロビーでは、one village one earth、シナピス工房、ネパリバザーロ、PEPUP、ピープルツリー、グリーンアイズ、第三世界ショップ、太陽油脂、吉村茶園、日本ケニア交友会などさまざまな商品を販売する「なんやか屋」もオープンし多くのみなさまに利用されている。一角では常設の六甲奨学基金ミニバザーのコーナーもある。

役員/職員、記念事業

理事長は、1972年の設立当初より2002年まで河上民雄氏がつとめた。その後、2009年まで辻建氏、2021年まで保田茂氏、そしてその後飛田雄一が就任して現在にいたっている。

館長(常務理事)は、初代館長を勤めた小池基信氏が5年9か月の働きののち1979年12月退任した後を受けて、辻建氏が館長に就任した。11年3か月を勤めたのち1991年4月より飛田雄一が2021年まで、そして2021年、朴淳用が就任して現在にいたっている。

スタッフとして、1981年以降、鹿嶋節子、山本達志、中野由貴が働き、現在は、都築和可子、大和泰彦が働いている。そのほか、多くのアルバイトに支えられてこれまでやってくることができた。その名前等は別項をごらんいただきたい。登佐尅己氏は1972年の設立以降19年間の働きを終えて1991年3月退職した。

1982年4月には会館5周年を迎えて記念講演を行い、1982年には財団法人設立に尽力されたマグルーダー氏を北米より招いて会館10周年記念式典を行い、加藤周一氏、竹熊宜孝氏の記念講演、関西芸術座による特別公演を行った。また、1987年4月には開館15周年記念事業として日本基督教団兵庫教区議長藤田公氏を迎えて式典をもち、中嶋正昭、加藤周一、粱瀬義亮、槌田劭、梶村秀樹の諸氏を招いて記念講演会を行った。

1992年には開館20周年記念事業として、ロビーの大々的な改装工事を行なうともに、劇団「態変」公演、鶴見俊輔、李泳禧、山下惣一各氏の講演会をおこなった。
2002年(30周年)には、松井やより氏の講演会、2012年(40周年)には、曺喜夫氏講演会を開催した。

50周年を迎えた2022年、菅根信彦氏の記念式典、李清一氏の記念講演会が開かれた。この50年冊子にその内容を収録している。

センターニュース、メールニュース

センターニュースは、年3回(4月、9月、12月)発行している。最近は毎号4500部を印刷し、そのうち約4000部が郵便で送られている。2002年発行の30年誌に2002年までのセンターニュースを再録している。それ以降のものについては、この50年誌に再録した。センターニュースは、センターの活動を広く知っていただくためのものだが、活動の貴重な記録となっている。

不定期発行のメールニュースは、で約5000のメールアドレスに送られている。ホームページは、何度かの改訂が行われて現在のスタイルに到達した。ちなみに、ホームページアドレスの「https://ksyc.jp/」、簡潔なアドレスだが、Kobe Student Youth Centerの頭文字をとって いる。メールニュースは、無料。希望者は、info@ksyc.jp に申し込むことになっている。バックナンバーは、79号(2008年3月)以降のメールニュースがホームページに掲載されている。

センターニュース、メールニュースともに発行/送付部数が多い。センターニュースは住所の分かるセミナー講師/参加者、古本提供者などに送っている。5000通を越えるときもあったが、数年に一度、名簿の整理をしている。最近送られてこないという方は再度連絡いただければお送りします。メールニュースはセミナーアンケートで送付依頼のあった方、なんらかのルートでセンターとつながりのできた方に送っている。

1992年には、20年誌『はたちのセンター、新たな出会い』を、2002年には、30年誌『20世紀から21世紀へ』を発行した。2012年には、新聞切り抜き集『新聞記事にみる学生センター40年』を発行した。いずれも近日中に、ホームページ内に「六甲アーカイブ」をつくりダウンロードできるようにする予定である。

諸団体との交流

センターの活動を側面から支え、活動をともにして下さった団体、グループとのつながりを抜きにセンターの50年を語るわけにはいかない。

現在センターに事務所あるいは連絡先をおいている団体/グループは以下のとおりである。
SCM(学生キリスト教運動)協力委員会、NCC-URM委員会、神戸大学YMCA、むくげの会、神戸・南京をむすぶ会、居空間RoCoCo、多文化と共生社会を育むワークショップ、はんてんの会、神戸石炭火力を考える会、市民デモHYOGO、青丘文庫研究会、アジアキリスト教交流史研究会、強制動員真相究明ネットワーク、神戸港における戦時下朝鮮人・中国人強制連行を調査する会、神戸電鉄敷設工事朝鮮人犠牲者を調査し追悼する会、神戸空襲を記録する会、兵庫県フロン回収・処理推進協議会、松田妙子さんの会、アジア労働者交流集会。

終了した団体/グループは、以下のとおりである。
六甲カウンセリング研究所、神戸日本語教育協議会(KECJL)、食品公害を追放し安全な食べものを求める会、INFOG(オゾン層保護・地球温暖化防止国際フォーラム)、兵庫県在日外国人教育研究協議会、外国人の生存権を実現する会、「多民族共生教育フォーラム・2005」実行委員会、
兵庫指紋押捺拒否を共にたたかう連絡会など。

現在センターが属しているネットワークには、神戸NGO協議会、関西NGO協議会、キリスト教施設長会、ひょうご市民活動協議会(HYOGON)、NGO神戸外国人救援ネット、Kife KOBE、県研(人権啓発研究兵庫県集会実行委員会)、ひょうご人権ネットワーク会議などがある。

「移転」のこと、コロナのこと

2018年ごろからセンターが1階に入っている六甲ニューライフマンションの建て替えが課題となった。1972年に作られたマンションの老朽化、1981年以前のマンションで耐震基準を満たしていないという問題があった。2020年3月、センターは、建て替えに同意した。

再建後のマンションに再入居も検討されたが、3年近くの他の場所での仮営業の可否、従来の規模の施設を建設することの費用負担が大きな問題であった。最終的に、権利を売って転出することにした。幸いウエスト100(本館)とノース10(分館)の賃貸物件を確保することができた

2021年5月以降、この2か所を拠点に活動が続けられている。宿泊事業は中止したが、貸会議室、古本市、ロビー書店、雑貨販売等は、引き続いて運営されている。

むすびとして

センター50年の歩みを振り返ってみるとき、時々の時代の要請にこたえて活動をすることができてきたと思う。小さな集まりであるが、多くの人々の力に支えられてのことだと感謝している。
2022年より「六甲ウィメンズハウス」の事業がスタートしている。2024年4月には40組の入居者をお迎えする。この事業は、セミナー、場の提供(貸会議室等)、六甲奨学基金の事業に加えて、これからのセンターの大きな柱となる事業である。

この50年間のセンター活動の中心は「出会い」であったと思う。この出会いは、センターを通しての人と人の出会いであり、テーマとテーマの出会いであり、人とテーマあるいはテーマと人との出会いであった。

この50年の出会いが、さらに新しい出会いを創りだすことを期待しながら次の50年への歩みを進めていきたい。引き続いてともに歩んでくださることを願っている。

※本稿は、30周年記念誌『20世紀から21世紀へ(2002年6月)』所収の略史(辻建、飛田雄一)に飛田が加筆・訂正したものです。セミナー、六甲奨学基金、職員、アルバイト等の記録については、別項をご覧ください。