法律
第 号
日帝強占下強制動員被害真相糾明等に関する特別法
第1条(目的)
この法は日帝強占下強制動員被害の真相を糾明して、
歴史の真実を明らかにすることを目的とする。
第2条(定義)
この法で使用する用語の定義は、次の通りである.
@ 「日帝強占下強制動員被害」とは、満州事変から太平洋戦争に至る時期に日帝に因って強制動員された軍人・軍属・労務者・軍慰安婦等の生活を強要された者が被った生命・人体・財産等の被害を言う。
A 「犠牲者」とは、日帝強占下強制動員に因って死亡したり行方不明になった者あるいは後遺障害が残っている者で、第3条2項第4号の規定に依り、日帝強占下強制動員被害犠牲者と決定された者を言う。
B 「遺族」とは、犠牲者の配偶者(事実上の配偶者を含む)及び直系の尊卑属をいう。但し、配偶者及び直系の尊卑属がいない場合には兄弟姉妹をいう。
第3条(日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会)
@
日帝強占下強制動員被害の真相を糾明し、この法に依る犠牲者及び遺族の審査・決定等に関する事項を審議・議決するために、国務総理所属下に日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会(以下、「委員会」とする)を置く。
A 委員会は、次の各号の事項を審議・議決する。
1. 日帝強占下強制動員被害真相調査に関する事項
2. 日帝強占下強制動員被害と関連する国内外の資料の収集と分析及び真相調査報告書作成に関する事項
3. 遺骨発掘及び収集に関する事項
4. 犠牲者及び遺族の審査・決定に関する事項
5. 史料館、慰霊空間造成に関する事項
6. この法で定めている戸籍登載に関する事項
7. その他真相糾明のために大統領令が定める事項
第4条(委員会の構成)
@ 委員会は、委員長1人を含む9人以内の委員で構成する。
A 委員は、日帝強占下強制動員被害に関して専門的知識があり、業務を公正かつ独立的に遂行できると認められた者と関係公務員の中から大統領が任命あるいは委嘱する。
B 委員長は、委員の中から大統領が任命する。
C 委員の任期は2年とするが、一回に限り延任できる。
D 委員が事故で職務を遂行できなかったり欠員になった時には、遅滞なく新らしい委員を任命しなければならない。この場合補任された委員の任期は前任委員の残余任期とする。
第5条(委員の職務上の独立と身分保証)
@
委員は外部のいかなる指示や干渉も受けず、独立してその職務を遂行する。
A
委員は身体上あるいは精神上の障害で業務遂行が顕著に困難になったり不可能になった場合及び刑の宣告に依る場合を除き、その意思に反し免職されない。
B
第2項中、委員が身体上あるいは精神上の障害で業務遂行が顕著に困難になったり不可能になった場合に該当するか否かは、在籍委員の3分の2以上の議決で定める。
第6条 (委員の欠格事由)
@ 次の各号の一つに該当するものは委員になることができない。
1. 大韓民国の国民でない者
2. 国家公務員法第33条の各号の一つに該当する者
3. 政党の党員
4. 公職選挙及び選挙不正防止法に依り実施する選挙に候補として登録した者
A 委員が第1項の各号の一つに該当することになった時には、当然退職する。
第7条(議決定足数)
この法に特別な規定がない限り、在籍委員の過半数の賛成で議決する。
第8条(事務局の設置)
@ 委員会の事務を処理するために委員会に事務局を置く。
A 事務局に事務局長1名とその他必要な職員を置く。
B 事務局長は委員会の議決を経て、委員長の提請で大統領が任命する。
C 所属職員中5級以上の公務員は委員長の提請で大統領が任命し、6級以下の公務員は委員長が任命する。
D 事務局長は委員長の指揮を受け、事務局の事務を管掌し、所属職員を指揮・監督する。
第9条 (職員の身分保障)
委員会の職員は刑の宣告・懲戒処分あるいは委員会の規定が定める事由に依らなければ、その意思に反し退職・休職・降任あるいは免職されない。
第10条 (委員会の運営等)
この法に規定された以外の委員会の組織及び運営に関して必要な事項は大統領令で定める。
第11条 (日帝強占下強制動員被害真相糾明実務委員会)
@ 委員会の議決事項を実現し、委員会から委任された事項を処理するために、当該特別市長・広域市長及び都知事(以下「市・都知事」とする)所属下に日帝強占下強制動員被害真相糾明実務委員会(以下、「実務委員会」とする)を置く。
A
実務委員会は、次の各号の事項を処理する。
1. 委員会から委任を受けた日帝強占下強制動員被害に関する事項
2. 犠牲者と遺族の被害申告の収集に関する事項
3. 被害申告に対する調査に関する事項
4. その他委員会から委任された事項
B 実務委員会は、委員長1名を含む15名以内の委員で構成され、委員長は当該市・道知事がなり、委員は関係公務員と犠牲者及び遺族代表を含み、学識と経験の豊かな者の中から委員長が任命あるいは委嘱する。
C 実務委員会の組織及び運営に関して必要な事項は条例で定める。
第12条 (真相調査の申請及び被害申告)
@ 犠牲者あるいは犠牲者と親族関係にある者や日帝強占下強制動員被害に関して特別な事実を知っている者は、委員会に真相調査を申請したり被害申告をすることができる。
A 委員会は第1項の規定に依る真相調査申請のための期間を定め、申告所を明記し公告しなければならない。この場合外国に滞在したり居住している者のために在外公館にも申告所を置く。
B 第1項の規定に依る申請は次の各号の事項を記載した文書でしなければならない。但し、文書に依ることができない特別の事情がある場合には口述ですることができる。
1. 申請人の姓名と住所
2. 申請の趣旨と申請の原因となった事実
C 委員会が真相調査開始の決定をした日帝強占下強制動員被害に関しては、第2項の規定に関わらず、委員会が定めるところにしたがって追加で被害申告を受けることができる。
D 第1項の親族関係と特別な事実の範囲は大統領令で定める。
第13条 (申請の却下)
@ 委員会は真相調査の申請が次の各号の一つに該当する場合には、その申請を調査せず却下することができる。
1. 申請が委員会の調査対象に属さない場合
2. 申請の内容がそれ自体明白な虚偽であったり理由がないと認められる場合
3.委員会が却下した申請と同一の事実に関して再び申請した場合。但し、従前の申請で提出しなかった重大な疎明資料を備えた場合には、これにあらず。
A 委員会は調査を開始した後にも、その申請が第1項各号の一つに該当することになる場合には、その申請を却下することができる。
第14条 (真相調査の開始)
@ 委員会は真相調査の申請が、第14条第1項で定めた却下事由に該当しない場合には、調査開始決定をし、遅滞なくその内容に関する必要な調査をしなければならない。
A 委員会は日帝強占下強制動員被害が発生したと認めうるに足る相当の根拠があり、真相調査が必要だと判断される時には、職権で必要な調査をすることができる。
第15条 (真相調査の方法)
@
委員会は調査の遂行において、次の各号の措置をとることができる。
1. 犠牲者及びその親族その他の関係人に対する陳述書の提出要求
2. 犠牲者及びその親族その他の関係人に対する出席要求及び陳述聴取
3. 犠牲者及びその親族その他の関係人、関係機関、関係施設、団体等に対する関係資料あるいは物件の提出要求
4. 日帝強占下強制動員被害が発生した場所等に関する実地調査
5. 鑑定人の指定及び鑑定依頼
A 委員会は必要であると認められる時には、委員あるいは所属職員をして第1項各号の措置をさせることができる。
B 第1項第3号の規定に依って関連資料あるいは物件の提出を要求された関係機関等は、大統領令が定める特別な事由がない限り、これに応じなければならない。
C 関係機関あるいは団体は日帝強占下強制動員被害関連資料の発掘及び閲覧のために必要な便宜を提供しなければならない。
D 第2項の規定に依る調査をする場合、当該委員あるいは所属職員はその権限を表示する証票を所持し、これを関係人等に提示しなければならない。
E 第1項第3号の規定に拠り出席要求を受けた関係機関等の長は、その資料が外国に保管されている場合には、該当国家の政府と誠実に交渉しなければならず、その処理結果を委員会に通報しなければならない。
F 委員会は関係機関を通して、外国の公共機関が保管している資料に関し、該当国家の政府に対しその公開を要請することができる。
第16条 (調査の期間)
@ 委員会は最初の真相調査開始決定日以後、2年以内に日帝強制動員被害についての調査を完了しなければならない。
A 委員会は第1項で定めた期間内に調査を完了することが難しい場合には、期間満了3カ月前に国務総理にその事由を報告して、6カ月の範囲内でその期間を延長することができる。
但し、上の期間延長は2回を超えることはできない。
第17条 (決定等)
@ 委員会は当該被害についての調査を完了した時には、次の各号の内容を決定しなければならない。
1. 日帝強制動員被害であるかの当否
2. 当該被害の原因・背景
3. 犠牲者及び遺族
A 委員会は第1項の決定をする場合、遅滞なく申請人に結果を通知しなければならない。
B 委員会は第1項の決定をした後、必要な場合被害の真相等について公表したり大統領と国会に報告することができる。
第18条 (委員の保護等)
@
何人も職務を行う委員・職員あるいは鑑定人に対して、暴行あるいは脅迫したり、あるいは職員に対し業務上の行為を強要あるいは阻止したり、その職を辞退させる目的で暴行あるいは脅迫をしてはならない。
A
何人も日帝強占下強制動員被害の調査と関連して、情報を提供したり提供しようとする理由で解雇、停職、減俸、転補等のいかなる不利益も受けない。
B
委員会は日帝強占下強制動員被害の真相調査と関連した証拠・資料等の確保あるいは隠滅の防止に必要な対策を講究しなければならない。
C
委員会は日帝強占下強制動員被害の真相を明らかにしたり証拠・資料等を発見あるいは提出した者に必要な報償あるいは支援をすることができる。 その支援あるいは報償の内容と手続きその他必要な事項は大統領令で定める。
第19条 (真相調査報告書作成)
@ 委員会は第18条の期間が終了した日から6カ月以内に日帝強占下強制動員被害真相調査報告書を作成し大統領と国会に報告し、これを公表しなければならない。
A 第1項の規定に依る報告書に含まれる内容は大統領令で定める。
第20条 (委員会等の責任免除)
委員会、委員、職員および委員会の委嘱あるいは委任を受けて業務を遂行した専門家、鑑定人あるいは民間団体とその関係者は、委員会の議決に依って作成・公開された報告書あるいは公表内容に関して故意あるいは重要な過失がない限り、民事あるいは刑事上の責任を負わない。
第21条 (慰霊事業の支援)
政府は、日帝強占下強制動員によって死亡した者を慰霊し、歴史的意味を顧み、平和と人権のための教育の場で活用するための次の各号の事業施行に必要な費用を予算の範囲内で支援することができる。
1. 慰霊空間(慰霊墓域、慰霊塔、慰霊公園)造成
2. 日帝強占下強制動員被害資料館及び博物館建立
3. その他の関連事業
第22条 (戸籍登載)
日帝強占下強制動員被害に因って、戸籍登載が漏れ落ちていたり、戸籍に記載された内容が事実と異なっている場合、他の法令の規定に関わらず、委員会の決定に従い大法院規則が定める手続きに依って、戸籍に登載するか戸籍の記載を訂正することができる。
第23条 (秘密遵守の義務)
委員あるいは委員であった人、委員会職員や職員であった人、鑑定人あるいは鑑定人であった人、委員会の委嘱に依って調査に参与したり委員会の業務を遂行した専門家あるいは民間団体とその関係者は、その職務遂行過程で知った情報、文書、資料あるいは物件を他の人に提供あるいは漏洩したり、その他に委員会の業務遂行以外の目的のために利用してはならない。
第24条 (不利益の禁止)
何人もこの法に依って委員会にした申請、申告、陳述、資料提供等の理由で不利益を受けてはならない。
第25条 (委員会と他の機関の協力)
@ 委員会はその業務遂行の内容と手続き及び結果に関して、民間団体の諮問及び意見を求めることができる。
A 委員会は必要だと認められる時には、その業務の内の一部を特定して、地方自治団体等の関係機関及び専門家に委任あるいは委託して遂行させたり共同で遂行することができる。
B
第2項の規定に依り委員会から委任あるいは委託された業務を遂行したり委員会との共同で遂行する関係機関(の関係者/訳者)及び専門家は、その業務の範囲内で委員会所属の職員と見なす。
C
第1項及び第2項の規定に関し必要な事項は、委員会の規定で定める。
第26条 (公務員の派遣等)
@ 委員会はその業務遂行のために必要だと認められる場合、関係機関の長にその所属公務員あるいは職員の派遣を要請できる。
A 第1項の規定により公務員等の派遣を要請された関係機関の長は、委員会と協議し所属公務員あるいは職員を委員会に派遣することができる。
B 第2項の規定に依って委員会に派遣された公務員あるいは職員は、その所属機関から独立して委員会の業務を遂行する。
C 第2項の規定に依って委員会に公務員あるいは職員を派遣した関係機関の長は、委員会に派遣した公務員あるいは職員に対して人事及び処遇で不利な措置をとってはならない。
第27条 (類似名称使用の禁止)
委員会でない者は、日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会あるいはこれと同一視されうる名称を使用できない。
第28条 (罰則)
次の各項の一つに該当する者は、5年以下の懲役あるいは2,000万ウォン以下の罰金に処する。
1. 第18条第1項の規定に違反して委員会の委員・職員あるいは鑑定人を暴行あるいは脅迫した者
2. 第18条第1項の規定に違反して委員会の委員・職員あるいは鑑定人に対して、その業務上の行為を強要あるいは阻止したりその職を辞退させる目的で暴行あるいは脅迫した者
第29条 (罰則)
第23条の規定に違反し、秘密遵守義務を守らなかった者は、2年以下の懲役あるいは1,000万ウォン以下の罰金に処する。
第30条 (過料)
@ 次の各号の一つに該当するものは、1,000万ウォン以下の過料に処する。
1. 正当な理由なく第15条第1項第4号の規定に依る実地調査を拒否・忌避した者
2. 第27条の規定に違反し類似名称を使用した者
A
第1項の規定に依る過料は、大統領令が定めるところに従い委員長が賦課する。
B
第2項の規定に依る過料処分に不服があるものは、その処分の告知を受けた日から14日以内に賦課権者に意義を提起できる。
C
第2項の規定に依る過料処分を受けた者が、第3項の規定に依り異議を提起した時は、賦課権者は遅滞なく管轄法院にその事実を通報しなければならず、その通報を受けた管轄法院は非訟事件節次(手続き)法に依る過料の裁判をする。
D
第3項の規定に依る期間内に意義を提起せず、過料を納付しなかった時は、国税滞納処分の例に依りこれを徴収する。
付 則
@ (施行日)
この法は交付後6カ月が経過した日から施行する。 但し、委員及び所属職員の任命、この法の施行に関する委員会規則の制定・公布・委員会の設立準備は施行日以前になすことができる。
A (委員の任期開始に関する適用例)
この法により任命された委員の任期は、この法の施行日から始まると見なす。
B (大統領令の制定)
委員長はこの法が公布された後、施行日前であっても、国務総理にこの法の施行に関する大統領令案の提出を建議することができる。
[翻訳] 福留 範昭 (
2004年 3月 8日 )