SCMネットワークニュース「かすがい」17号(2000年2月)

発行所:〒657-0064 神戸市灘区山田町3-1-1
(財)神戸学生青年センター内 SCM協力委員会
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編集担当:飛田雄一、吉沢託

第21回SCM現場研修レポート紹介

すでに22回の研修を間近に迎える時期に報告をお伝えすることになり、申し訳ありません。今回は、レポートの中から、3人のものをご紹介します。

釜ヶ崎 児玉悠一 

 <前略>一番最初に強く感じたことは、釜ヶ崎の労働者には“人間的な魅力がある”ということです。普段、接している大学生・社会人と違うから魅力的なのかな、とも思ったのですが、そうではなくて裸の人間として、つまり肩書きとか社会的地位にとらわれずに人を判断して、魅力的だと感じました。

釜ヶ崎で生活しているうちに、非常に気分的に楽になったのは、労働者や野宿者の人達が「裸の人間同士のつき合い」をしてるからだと、強く感じました。これは、一般の人達に失われてしまっているものだと思いました。

他にも多々あるのですが、一番大きく感じたことを書いておきます。

『きじむなあ』にて 左端はスタッフ日野(写真省略、後日挿入するかも、飛田)

釜ヶ崎の子どもたちと/釜ヶ崎 岸田真由子     

 報告会での光現さんの指摘がなかったら、私の釜ヶ崎での現場研修はただ楽しかっただけで終わっていただろう。あの時、私も一緒になって笑っていた。血を流している人をバカにしたのではなかった。自分にとってそれほど深い意味は持っていなかった。その後、彼は、「研修で何をやっていたんだ」と、言った。(その時私はいなかった)その後、私は自分のしていた事を思い出した。毎日、どんな気持ちで取り組んでいただろうか。シェアーの時は?はっきりいってひどかった。2回の発題のうち、1回目は体調が悪く、席を立つ事が多かった。2回目では眠気に負け、ほとんど話を聞いていなかった。シェアーの時は、自分の感じた事と言うよりは、今日あった面白い出来事を和やかな雰囲気の中で話をしていた。はっきり言ってあれらはシェアーではなかった。血を流していたおじさんの事を何故、笑いながら話したのか、私の仲間は理由を話した。実は、彼は、以前にこの話をしていた。その時、私は、彼がおちこんでいる事に気づいていたのに、話を真剣に聞いていなかったと思う。そして、それについてシェアをしなかった。そして、2つの研修先について、生野は生野、釜ヶ崎は釜ヶ崎と別々のものだと思っていた。また、研修中建物や行政などの問題ばかりにふれ、労働者の心理面に触れる事が非常に少なかったと思う。けれど、その中でも労働者、露天を開いて生活しているおじさん、協友会の人や子供達との印象的な出会いもあった。私の中で釜ヶ崎が少し変わった。おもしろいおじさんもいる。だから、私は、報告会で、偏見がうすれたと言った。でも、本当は、釜ヶ崎の街とそこに住むホームレスの人達に対しての偏見は、うすれてはいなかった。それは、釜ヶ崎スタッフの1人が「もし、自分の町にホームレスが住みついたら・・」と問いかけた。私は、考えた。いやだった。もし、自分の近所の公園に身なりの汚い格好をしたおじさんがそこで煮炊きをしたらやっぱりいい気持ちにはならないと思う。

研修中、私は真剣に取り組んでいなかった。光現さんが問題提起してくれたおかげで私は、今までをふり返る事ができた。最後に全員で行なったシェアが今までで一番心の内が話せて良かった。そして何より、大切な友達が沢山できた事が私の中ではとても大きい。これからも連絡をとりあっていきたい。9日間の体験は少しずつ生かされてくると思う。この研修で、私は自分の中                   にある優越感、偏見、あらゆる面が表れてきた。でも、自分のいやな側面                   を見る事ができたのも大事な体験だったと思う。この研修に参加して今、本当に良かった。

生野学生スタッフ奥田・伊集院(写真、省略)

 生野・片田孫朝日                  

 ほんとうに、あっという間の9日間でした。ゴム工場での労働や、夜の発題、研修生同士のおしゃべりと飲み会など充実した内容で、気づいたらいつの間にか最終日を迎えていた、という感じです。学ぶべきことが多く、新しい友達もできたし、研修に参加できてとてもよかったと思っています。

 以下では、ゴム工場の労働を中心に研修で感じたことを報告します。ぼくが仕事の手伝いをした金山ゴム工業所は、とても小さな現場でした。60歳を越える2人の工員が工場の数台のプレス機でゴム板を変型し、それを社長のオモニと甥っ子が引き取って、向いのオモニの家で製品をくり抜き仕上げます。社長の金(山)純三さんは、工場に備え付けた電話で仕事の相談をしたり、他の人と一緒に作業をしたり、あるいは車での製品の納入をしていました。そんな、小さな家内工業的な現場でした。

 ぼくは、ゴム製の冷蔵庫の足から、不要なゴム部分を取り除く作業を主にやりました。こんな部品だけを無数に生産し、しかもその過程のかなりの部分を手作業でやっていることにまず驚きました。冷蔵庫が店に並ぶときには、松下のマークがついているそうなので、そのゴム足を、生野の朝鮮人の運営する小さな工場で作っているとは想像もできないでしょう。ぼくたちの生活は、そんな分業の上に成り立っているのだと実感しました。

ゴム製品を仕上げる作業は、単純なからだの動きの繰り返しです。

重労働ではありませんが、数日間だけで十分あき飽きしました。一方、工場でのプレス作業は暑さがたいへんで、「夏は生きた心地がせん」と工員の一人が語ってくれました。その方は2世の帰化者で、ぼくの母が学校の教員だったと言うと、ぼくも公務員になるように薦めてくれました。「稼ぎがいいから」と。それは、若い頃からきつい肉体労働を続けてきた彼の本音だと思います。公務員になろうかと考えている自分にはしんどい言葉でした。

 この他、夜の発題では、語り手の憤りや痛みが何度かぼくの心を掴みました。シェアーでは、ほかの研修生の発言から、自分が真剣に労働現場に向き合っていないことを自覚させられることもありました。どれも得難い経験だったと思います。

 ぼくは、現在も金山工業所で働いている人たちや、その労働現場、そして発題者の人やその話から伝わった思いを忘れずにいたいです。

また、他の研修生や学生スタッフなどと、今後も在日朝鮮人を取り巻く問題などについて話をしていければいいな、と思います。来年は、今年の経験を活かし、学生スタッフとしてより良い研修を作っていきたいです。

パーティー準備中の台所から(写真、省略)

新スタッフインタビュー

 第22回(2000年3月)の研修は、この二人を中心に進められています。

なかなかやり手なお二人の所信をお届けします。

『第22回SCM現場研修にあたって』/釜ヶ崎学生スタッフ代表 川口善男

 はじめまして。私は、前回のこのプログラムで釜ヶ崎の研修生として参加しました。

 そのとき私は、今まで自分が生活してきた環境と釜ヶ崎のそれを比べた時に、その格差があまりにあることに対して、そのことに今まで気づくこと、知ろうとすることもなく過ごしてきた不甲斐ない自分と、そのことを隠し、変えようともしなかった今の日本の社会に対する不信や不安、恐れ、怒りといったものを複雑に感じながら過ごしました。

また、多くの人たちが釜ヶ崎のことで様々な視点から支援活動をしていることを知り、出会えたことにある種の希望を知ることと共に、自分にも何か出来る事をしなければという使命感を覚えました。 そこで私がまずできる一番大きなことは、学生スタッフとして多くの研修生に釜ヶ崎を知ってもらい、体験をしてもらうことだと思います。そして私自身、これが釜ヶ崎の、日本だけの問題でなく、大きな世界との関わりの問題として広い視野をもって勉強し、研修生とともに考えていきたいと思っています。

『体験・出会い・感情を受け止めあうことを大切に』/生野学生スタッフ代表 片田孫朝日

  京都で大学生をしてます。現在休学中で来年大学院を受験します。

 去年生野の研修に参加し、実際の労働体験と労働現場・講師・現場スタッフの人たちとの出会いにより受けた印象が、自分の中に今でも残っていて、現場研修の意味というのは、本で読むのと違って、体験をしたり、具体的な人との出会いや感情を自分で感じることにあるのだなあと思いました。

 今年の現場研修については、プログラムの内容もそうなのですが一番大切にしたいのは、研修生が自分の感じたこと、驚いたこと、気づいたこと、楽しかったことをできるだけ話しやすくし、他の人と突き合わしたりし易い場を作ること、これを大切にしたいと感じています。

 差別問題というのは、正しい事とか、通りやすい事を話したりしやすいが、それを一端外して、体験や感情を受け止めたりすることを大事にしたい。

 内容としては、国籍制度に直接関わる権利のことを取り上げたい。

僕も含めて日本国籍を持っている者は、そうでない者との間にあるそうした違いを自覚するべきだと思うからです。

 また、新しく韓国から来た人たちに話してほしい。生野にも、オールドカマー・ニューカマーがいて、ひとくくりに出来ない固有の悩みや生き方を持っている。そういうものを僕自身知りたいし、研修生とも共有したいと思っています。

    SCMer´S VOICE
      〜パーティーご招待はがき返信から〜

 全くご無沙汰してしまっていてすみません。医学部医学科というのは本当に忙しい所で息をつく暇もありません。昨年(98年)三月の研修では貴重な体験をさせていただきました。今でも懐かしく思い出します。
 一年を経て、当時のことを考え直す余裕も持てないでいますが、パーティーに参加できるようであれば、その辺のことも考えて話してみたいと思っております。 鳥取大学 大石直子

 こんにちは。たしか1993年の研修に参加した、九州の(当時は佐賀でした)堀尾礼実です。今は、大分の総合病院で、小児科の研修医をしています。毎年、パーティーのご案内頂いてますが、まだまだ、したっぱで、休みをとるのはムリで、今回も欠席です。これから「C」「M」として、医師としてどう働いてゆくか。大きな大きな課題です。大分市 堀尾礼実

参加したいけど日程上できませ〜ん!残念!良き会となりますように。各務原市 横山順一

(99年)4月から、和泉市にある日本基督教団いずみ教会に赴任することになりました。しばらくは、教会の仕事に慣れることに時間がとられると思いますが、いずみ教会自体が炊き出しなどで関わっているようなので、色々な形でつながりが持てると思います。大阪府 森田喜之 

20周年おめでとうございます。
 SCMerのパワーで日本・地球が変革されていくことに期待しています。共にがんばろう!
         京都市 平田 義

 遠方につき欠席します。盆と正月にしか関西に行く時はありません。でも皆さん楽しんで下さいね。人のつながりと暖かさが一番ですね。<中略>P.S たこぼん食べたい。「さとみ」のお好み食べたい。チジミたべたい。 愛媛県 今井牧夫

 残念ながら当日は倉敷教会の黙想を頼まれていて、出席できません。SCMのことは常に心にかけ、カトリックの司祭として応援しています。よき会を祈ります。山口市 薄田 昇

 

Short Information 

・第22回現場研修

先日ご送付しましたパンフの通り、
3月11日(土)〜19日(日)9日間でやります。すでに計20名の応募があり、これ以上増えたらどうしようかと贅沢な心配をしてはります。スタッフの人望と努力に敬服。

・NCC関西青年協議会 大阪へ移転

すでに昨年4月から京都より大阪の玉造駅近く韓国YMCAへ事務所を移し、メンバーの一人でもある同性愛者を受け入れる教会・社会作りを中心に青年の課題に取り組んでいます。代表はSCMer金一恵、事務局長は編者吉沢です。どうぞご参加・ご応援下さい。

<SCM協力委員会のページ>

@募金をありがとうございました

名古屋聖ステパノ教会 5,000円 河井 宇史 3,000円
聖和大学宗教委員会 8,000円 赤井 充也 3,000円

ASCMメーリングリストをつくりました

SCM現場研修は今年22回目を迎えます。参加者は延べで約300名になります。元研修生はそれぞれの場所で活躍されていることと思います。その元研修生、現場研修にスタッフとして参加してくださった方々、またSCM協力委員会委員らの相互交流の「場」として「SCMメーリングリスト」つくりました。メーリングリストというのは、一通のメールをだすとそのメーリングリストの参加者全員に自動的に配信されるというものです。E-mailアドレスをおもちの方は是非ご参加ください。

参加ご希望の方は、rokko@po.hyogo-iic.ne.jp に、「SCMメーリングリスト参加希望」というメールを送ってください。事務局で参加の手続きをいたします。

また、SCM協力委員会ホームページは、ときどきは更新をしながら発展しています。一度のぞいてみてください。

http://www.hyogo-iic.ne.jp/~rokko/scm.html

2000.2.20 SCM協力委員会・主事/飛田 雄一(神戸学生青年センター)

<編集後期>(略)

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