======================================================================== 青丘文庫研究会月報<235号> 2009年9月1日 発行:青丘文庫研究会 〒657-0064
神戸市灘区山田町3-1-1 (財)神戸学生青年センター内 TEL 078-851-2760 FAX 078-821-5878 http://www.ksyc.jp/sb/ e-mail hida@ksyc.jp @在日朝鮮人運動史研究会関西部会(代表・飛田雄一) A朝鮮近現代史研究会(代表・水野直樹) 郵便振替<00970−0−68837 青丘文庫月報>年間購読料3000円 ※ 他に、青丘文庫に寄付する図書の購入費として2000円/年をお願いします。========================================================================= ●青丘文庫研究会のご案内● ■在日朝鮮人運動史研究会関西部会 お休み ■朝鮮近現代史研究会 9月13日(日)午後3時〜5時 植民地期朝鮮における中国人労働者 −新聞記事にみる万宝山事件の影響− 堀内 稔 ※会場 神戸市立中央図書館内 青丘文庫 TEL
078-371-3351 第4回在日朝鮮人運動史研究会・日韓合同研究会が開催されました 2009年7月24日〜25日 神戸学生青年センター (写真は略。PDFファイルをごらんください。) 第266回朝鮮近現代史研究会(2009.6.14) 在満朝鮮人に関する英国外交報告:1920年代「間島」・南満州を中心に 梶居 佳広 満州事変の調停のため、国際連盟が派遣したいわゆるリットン調査団の報告書付属書のなかに日本の満州(現在の中国東北部)権益に関する数少ない欧米人専門家であったアメリカのヤング(Walter.Young)が執筆した「日中紛争の要因としての在満朝鮮人問題」が収録されていることはある程度知られている、1931年9月19日、即ち満州事変勃発の翌日(時差を考慮するとほぼ同時)に英国外務省極東局(N.Charles)がまとめた「満州における日中対立に関する覚書」の叙述の多くが満州に住む朝鮮人を巡る問題(中国人と朝鮮人の衝突、朝鮮人と日本との関係)で占められている事実はあまり知られていない。一般にイギリスは満州に殆ど権益がなかったことから満州事変への関心が低く最も日本に宥和的であったともされる。ただ、その一方で中国全体をみれば日本と並んで最も権益を有する国であったイギリスは、満州情勢についてそれなりに注意を払っていたことも事実である。本報告は満州事変前後に国際的にも明らかになった在満朝鮮人の問題をイギリスがどうみていたかについて、今回は事変勃発以前(主に1920年代)に限定し史料整理と検討を加えたものである。なお史料として現地駐在外交官がまとめた年次報告並びにイギリス外務省が機密史料として編集した「コンフィデンシャル・プリント」を使用した。従って、イギリス本国の問題への関心度はある程度わかる一方、「客観的」にみて重要と思われても収録されていない現地報告が存在する可能性がある点は予め断っておきたい。 まず20年代前半については、1920−21年日本が行った間島出兵に関する報告が目立っている。イギリスの関心は当然のことながら日本の軍事行動にあったが、特に現地における残虐行為並びに中国が間島に有する国家主権との関係に注目していた。残虐行為については、前年勃発の3・1運動と同様、現地在住宣教師(カナダ長老派)の告発が奉天総領事→北京公使館、ソウル総領事→東京大使館、英字新聞(Japan Advetiser,North China Heraldなど)へと伝わり、その結果「3・1」とは異なり本国外務省が日本へ「勧告」を行うことはなかったが日本への批判が広がることになる。ただ一方で日本に批判的な中国駐在外交官と批判に消極的な日本駐在外交官という違いも存在しており、この両者の温度差は日本の軍事行動と中国の主権に関する議論ともリンクしていた。即ち、中国駐在外交官は日本の行動=中国の主権侵害として間島(イギリス文書では「吉林省東部」の一地域を指している)併合を狙っているとの懸念を示したのに対し、日本駐在外交官は「間島の現状」から「日本臣民の生命・財産の安全確保」という日本側の主張にも耳を傾けたのであった。 日本軍撤退後は、1926年まで間島をはじめとする国境地帯(明確な国境線は不明確であるが)における日本対中国、日本対朝鮮人の衝突が散発的に紹介される程度となったが、1927年(26年年末)から「土地問題」が浮上してくる。即ち、1915年「南満東蒙条約」で日本が獲得したとされる土地商祖権(中国側は否定)を巡る日中紛争の一例として、当時「日本帝国臣民」とされた朝鮮人と中国地主・当局との紛争への関心が高まり、関連して1927年朝鮮で発生の反中国の動きも紹介されるようになる。これらの報告は奉天総領事であったウィルキンソン(F.E. Wilkinson)、並びに大連領事ホワイト(O.White)、デニング(E.Dnning、第2次大戦後に駐日大使)が主にまとめたものであって、20年代前半と同様、中国駐在と日本駐在との間に温度差がみられたが、両者とも日本政府が朝鮮人に国籍変更を一切認めない態度をとったことに問題の起源をみる点では一致していた。大連領事だったホワイトはソウル総領事就任後、1930年間島で発生した日中警察の衝突に触発されて間島における日本の領事館警察や朝鮮人の動向(報告では4月発生と誤記している「5・30事件」等)に関する報告を多く作成しているが、ほぼ同時期に北京(北平)からも駐在武官が間島視察に派遣されている。この間島情勢の緊迫化と翌1931年発生の万宝山事件、事件直後に発生した朝鮮における反中国暴動によって本国外務省も在満朝鮮人に関する問題への強い関心を示すようになったが、その矢先満州事変が勃発することになる。 以上の満州事変までの在満朝鮮人に関するイギリス外交官報告は、間島をはじめとする国境紛争と土地問題を中心とした中朝間のトラブルに関するものが大半であり、中国側の治安維持・行政能力を疑問視する一方、朝鮮人の国籍変更を認めない日本の姿勢に批判的だった点は中国駐在外交官と日本駐在との間で力点の置き方に相違がみられるとはいえ、時期を問わず一致していた。 ただ、イギリス報告のもう一つの特徴として、日中対立に関心が集中する一方朝鮮人に焦点を当てたものが少ないこともあげられる。勿論、間島出兵のような事例があり、また満州在住朝鮮人の多くは日本政府に敵対的で日本側もそのことを承知しているがゆえに国籍変更を拒絶したこと、朝鮮人は不毛の地であった満州における米作栽培に大きな役割を果たしたことなどの指摘もみられるが、これらはあくまでも例外であった。例えば、1927、1931年の中朝衝突についての報告をみると(万宝山事件後の日本側の不可解な動きも含め)中国人の迫害に関するものが大半であって、朝鮮人は中国と対立する存在乃至日中対立の脇役としての位置づけしかなされていない。一般に外交官は駐在する国に好意を持つ傾向があり、今回の場合も中国駐在外交官、日本駐在外交官共この傾向が認められる。ところが韓国併合で主権国家を失った朝鮮の場合、自分たちの主張を代弁してくれるであろう外国(ここではイギリス)の外交官を持たないことになり、事実イギリスは日本駐在外交官が朝鮮領事を兼ね朝鮮専門の外交官を養成することはなかったのだった。このことも日本の朝鮮植民地化がもたらした「弊害」の一つといえるかもしれない。 今後の課題としては、冒頭で触れたリットン報告書との比較も含めた満州事変勃発後並びに「満州国」における朝鮮人の位置づけに関する報告の検討の他、ソ連・社会主義の影響の有無を中心とした北満州(ハルビン)における朝鮮人の動向に関する報告についても見直す必要があるといえよう。これらの問題・論点については、機会があればまた後日報告していきたい。 ● 強制動員真相究明全国研究集会/第4回在日朝鮮人運動史研究会・日韓合同研究会の資料集を販売します。ご希望の方は、ご希望の方は、切手80円8枚、640円分を下記までお送りください。 <送付先>〒657-0064 神戸市灘区山田町3-1-1 神戸学生青年センター内 飛田雄一 TEL 078-851-2760 FAX 078-821-5878 e-mail hida@ksyc.jp <強制動員真相究明全国研究集会>−「名簿」「供託金」問題を中心として− ・連行期朝鮮人名簿の現状と課題 竹内康人 ・「遺骨」問題 (発表と対策会議) 1)日本に残っている朝鮮人労働者の遺骨 福留範昭 2)討論 遺骨返還問題について ・「供託金」問題 1)供託金の事務手続きと名簿原本の出所について 金慶南 2)供託金名簿と個人請求権について 小林久公 3)浮島丸の沈没原因を考える(仮題) 大井田孝 4)浮島丸被害死者と軍人軍属の供託金調査結果について 青柳敦子 ・全体会/特別報告 1)講演 山本晴太(弁護士) 「個人の請求権に関する国側主張の変遷」 2)コメント・報告 ・「強制動員犠牲者等の支援に関する法律」から排除された被害者の実態 〜強制動員被爆者の事例を中心に〜 市場淳子(韓国の原爆被害者を救援する市民の会) ・強制連行企業責任追及の現状と課題 中田光信(戦後補償企業ネットワーク) 3)特別報告 ・日韓会談文書と個人請求権について 吉澤文寿 ・「韓国併合」100年を迎え、平和の石塚運動および平和の通信使派遣を提案する 嚴敞俊 <第4回在日朝鮮人運動史研究会・日韓合同研究会> 報告@日帝強制動員朝鮮人被害者の供託金に対する韓国政府の支援の状況 崔永鎬 報告A占領期における日本政府の在日朝鮮人政策の検討 ―1948年中盤〜1949年初頭の時期を中心に 宮本正明 報告B三井財閥と朝鮮人強制労働 竹内康人 フィールドワーク<神戸港 平和の碑> 【今後の研究会の予定】 10月11日、近現代史(宋伍強)&閔妃関連の韓国TV上映、解説・金慶海、11月8日(日)、在日(砂上昌一)、近現代史(高誠晩)、12月13日、在日(杉本弘幸)、近現代史(未定)。研究会は基本的に毎月第2日曜日午後1〜5時に開きます。報告希望者は、飛田または水野までご連絡ください。 【月報の巻頭エッセーの予定】 10月号以降は、松田利彦、三宅美千子、吉川絢子、李景a。よろしくお願いします。締め切りは前月の10日です。 |