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青丘文庫研究会月報<225号> 2008年7月1日

発行:青丘文庫研究会 〒657-0064 神戸市灘区山田町3-1-1

()神戸学生青年センター内  TEL 078-851-2760 FAX 078-821-5878

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 @在日朝鮮人運動史研究会関西部会(代表・飛田雄一)

 A朝鮮近現代史研究会(代表・水野直樹)

郵便振替<00970−0−68837 青丘文庫月報>年間購読料3000

     他に、青丘文庫に寄付する図書の購入費として2000円/年をお願いします。=========================================================================

 

●青丘文庫研究会のご案内●

 ■第305回在日朝鮮人運動史研究会関西部会

  7月13日(日)午後1時〜3時

 「夜間中学で学ぶ在日朝鮮人女性

   ―作文とライフヒストリーに投影するポスト植民地問題―」

                       山根実紀

 ■第260回朝鮮近現代史研究会

  7月13日(日)午後3時〜5時

 「中国河北省故家荘にある金史良の抗日文学碑のこと」

                        愛沢革

 ※会場 神戸市立中央図書館内 青丘文庫  TEL 078-371-3351

 

<巻頭エッセー>

さわやかな梅雨の一日     太田 修

 

職場でのこと、先日、通信教育部の学生さんの面接をした。

Tさんは小学校時代に法隆寺に行って感動したことから話され始めた。「奈良にあるお寺の多くが中国大陸や朝鮮半島と深い関係があると知ったとき、単純にものすごいなーって思いました。それで、いつか歴史をやってみたいと。」

「この年になって、勉強することが楽しくて、楽しくて。どの授業も新鮮で、授業を受けるたびに心を動かされて、あれもやりたい、これもやりたいと思うんです。」

「そのように言ってくださって、とてもうれいしです。」と、私。

「そやけど、よくばって全部やりたいと思うからテーマが決まらない。どないしたらよろしいでしょうか。」

「そうですね。Tさんが一番やりたいと思うものを見つけて、決断するしか…。」

私の苦し紛れの返答が終らないうちに、「朝鮮史をしたいんですけど」とTさんは言って、卒論のテーマが書かれたメモをみせてくださった。そこには古代から現代までの日本列島と朝鮮半島の歴史のテーマが15個ほど列挙されていた。

「あのう私、大学生の子供がいるんですけど、子供に日韓併合がそもそも間違いのもとやったんやといつも言うんです。でも、正直いうたらちょっと自信ないんです。」

「ちっちゃい頃、わたしが住んでいた街に朝鮮部落があったんですけど、母親にそこは恐いから近寄ったらあかんて言われてました。そやけど、実際に付き合ってみたらぜんぜんそうやない。わたし、高校の時、サッカーやってましたけど、建国高校や朝鮮高校とよう試合しました。建国高校の監督の朴先生は、わたしらを家に呼んでくれてとてもかわいがってくれました。ほんまにいい先生でした。もう亡くなられましたけど。」

「それから、<在日>ともサッカーで友達になりました。建国高校や朝鮮高校は強かったですよ。あるとき友達が、なんで俺らだけ全国大会に出られへんねん、て泣くんですわ。今は時代が変わって出られるようになりましたけど。その時、私はものすごいショックを受けましてね、そのこといまだによう忘れられませんねん。」

Tさんは、高校時代のサッカーと建国高校の朴先生、友人たちへの思いを、ひとしきりどーっと話されたあと、「子供にも話しなあかんし、何よりも人生の最後に今一番気になっていることやりたいし…。私、日韓併合のことを卒論でやってみます。」Tさんはそう言って風のように帰っていかれた。

私はあとで思い出してみると、「韓国併合の歴史をやられるならば…」と簡単にアドバイスをしたのだが、Tさんの漫才のような話にふきだし、溢れる思いに涙しそうになりながら、ただひたすら話を聞いていたような気がする。

生活の中から歴史を考え、歴史を勉強することを楽しむ。歴史学とはこういうものなのだと、日常のあわただしさの中で忘れかけていたことを、Tさんにあらためて教えてもらったようで、とてもありがたくもあり、うれしくもあった。そのためか、その日は一日中さわやかな気分でいられた。

 

302回在日朝鮮人運動史研究会関西部会(2008413日)

1945年敗戦間際の大阪府特高警察と朝鮮人

   ―防衛研究所で発見した新資料を中心に― 塚崎昌之

 

 本年2月、東京の防衛省防衛研究所附属図書館で、偶然、『昭和二十年.四〜八 特高関係資料 大阪府警察局』という簿冊を発見した。この簿冊は大阪の各警察署の特高警察係や警察局の特高課員が、特高第一課長の調査指示に基づいて収拾した情報を警察署長名などで警察局長に報告した書類を集めたものと推測される。報告書は83本、計474枚である。例えば、5月前後のドイツ敗戦、61日の第二次大阪大空襲、6月下旬の沖縄陥落に関する民心の動向などの報告書であり、とりわけ工員の出勤率には気を使っている。中には株式の動向やガス需給量調査まである。83本の中、朝鮮・朝鮮人に触れた報告は10本である。

 特高警察は1910年の大逆事件の後に思想を取り締まる部署として設置されたが、早くも1916年には日本在住の朝鮮人への警戒を始めた。大阪でも1922年に特高課の中に「鮮人専務係(内鮮係)」がおかれ、節目ごとにその係員は増大していった。各警察署にも特高警察係がおかれ、その中に朝鮮人を担当する警察官が置かれた。

朝鮮人に関わる報告書のうち、特に2本は注目に値する。一つは堺北署の61日付の第二次大阪大空襲に関する「敵機ノ大挙来襲ニ伴フ部内各方面ノ情勢報告」である。民心の動向に関する報告の55行の内、47行を朝鮮人に費やしている。この日、空襲警報発令と同時に朝鮮人密住地域3か所に「密住地域査察班」、重要工場・事業所に「情報蒐集班」を派遣した。また、一般朝鮮人の動向の査察には「専務員」を当てた。防空指導のために「興生会堺北支会警備要覧」も作られていた。戦争末期に、警察による朝鮮人に対するこのような徹底した監視システムが設けられていたことは、従来の研究では指摘されていない。

 もう一つは高槻署の62日付けのタチソに関する「高槻建設隊(緊急施設)ニ於ケル朝鮮人労務者ノ動静ニ関スル件」である。工事開始日、工事の規模、労働者数、就労時間、勤労管理、賃金、食糧、犯罪、事故と、こと細かな報告をあげている。今まで不明であったことの多くがこの報告書によって判明した。松代大本営をはじめとした陸軍の五大地下倉庫関係工事でこのような特高関係の資料が発見されたのは始めてである。軍関係の工事でもあるにもかかわらず、特高が積極的に、そして緻密に朝鮮人管理、特に労務管理を行っていることが読み取れる報告である。

 その他の資料からも、特高が朝鮮人に対する「逃亡」の防止、「疎開」の阻止などを通じ、朝鮮人労働力の確保に汲々としていることが読み取れる。

 朝鮮人を含めてこの資料全般を見渡すと、本来、「思想警察」とも呼ばれ、思想を取り締まることが任務であった特高の役割が、学徒動員の労務管理、罹災者の工場出勤率などから、果ては株式の動向まで、生産力維持に任務の重点が変化していることに気付かされる。戦時生産・戦時経済の維持が特高の最大の任務であったかのようである。しかし、特高のこのような動きにも関わらず、朝鮮人の「逃亡」、「疎開」等を食い止めることができずに、朝鮮人労働力の確保が十分にできなかったことは歴史の事実が示している。

 

■コリアン・マイノリティ研究会 第61回例会

「丹波マンガン記念館」バスツアー

日 時:7月19日(土)10:00(JR京都駅八条口バス乗り場集合) 10:15出発

17:00(JR京都駅到着予定)

先着39名様(事前予約要) 終了後、希望者で東九条で懇親会 

★ご予約は⇒ masipon@nifty.com TEL/FAX06−6328−1073 携帯090−9882−1663(藤井)まで

会 場:丹波マンガン記念館(京都市右京区京北下中町西大谷45番地)

   http://www6.ocn.ne.jp/~tanbamn/ 

参加費:一般3500/学生・院生3000/高校生以下1500円(バス代・入館料・資料代込み) 【弁当・飲み物はご持参ください】

1989年に開館した「丹波マンガン記念館」(京都市右京区京北)は戦前・戦後の朝鮮人の鉱山労働の跡を直接見ることのできる数少ない現場の一つです。この記念館が来年末には閉館することになりました。記念館は館長の李龍植(リリョンシク)さんとアボヂで初代館長の李貞鎬(リヂョンホ)さん〔じん肺による呼吸不全で、1995年死去。享年62歳。2歳で渡日した貞鎬さんの骨は舞鶴の海に散骨された〕が墓の代わりに手作りで作ったミュージアムです。国や地方公共団体からの公的な補助もなく、施設も老朽化し、入館者が減る中、毎年600万円以上の赤字が続いて、もうこれ以上維持することはむずかしくなったとのことです。本来ならば、このような仕事は個人でやるにはあまりにも荷が重過ぎます。2002年にはNPO法人(特定非営利活動法人)になったものの、家族経営で20年近くよく頑張ってこられました。

今回、コリアン・マイノリティ研究会では、在日朝鮮人運動史研究会関西部会・ウトロまちづくり研究会と共催でバスツアーを企画することにしました。館長の解説を聞きながらマンガン鉱山の坑内・記念館を見学します。初めての方を優先的に歓迎します。

●コリアン・マイノリティ研究会● http://white.ap.teacup.com/korminor/

●共催:在日朝鮮人運動史研究会関西部会・ウトロまちづくり研究会

 

■ <神戸港 平和の碑>除幕式

 日時:2008年7月21日(月、休日)午後0時

 会場:神戸市中央区海岸通3-1-1 KCCビル前

    (神戸華僑歴史博物館のあるビルです)

  ※午後1時より徒歩5分の雅苑酒家でパーティを開きます。

  参加される方は、事務局まで事前に連絡をいただければ幸いです。

 

 引き続き300万円を目標に募金活動を行っています。ご協力をよろしくお願いします。

 送金先 :郵便振替口座<00920−0−150870 神戸港調査する会>

 

【今後の研究会の予定】

 9月14日(日)、在日(砂上昌一)、近現代史(梶居佳宏)。研究会は基本的に毎月第2日曜日午後1〜5時に開きます。報告希望者は、飛田または水野までご連絡ください。 

 

【月報の巻頭エッセーの予定】

 9月号以降は、金慶海、斉藤正樹、坂本悠一、高野昭雄、塚崎昌之、土井浩嗣、中川健一、玄善允、松田利彦、三宅美千子、吉川絢子、李景a。よろしくお願いします。締め切りは前月の10日です。

 

【編集後記】

           毎日暑い日が続いています。みなさんいかがお過ごしでしょうか。『月報』の夏ばて気味で?少々発行が遅れました。8月の研究会はお休みで、9月からはまた再開です。第2日曜日の午後1〜5時に神戸市立中央図書館別館の青丘文庫横の研究室で開いています。以前は、在日と近現代史(さらにキリスト教史研究会がある時もあった)を別々の日に開いていましたが、メンバーもだいぶ重なって負担となるので、現在のようなロングランの研究会となりました。

           みなさん、ビールの飲みすぎには注意しましょう。はい。  飛田雄一 hida@ksyc.jp

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