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青丘文庫研究会月報<223号> 2008年5月1日

発行:青丘文庫研究会 〒657-0064 神戸市灘区山田町3-1-1

()神戸学生青年センター内  TEL 078-851-2760 FAX 078-821-5878

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 @在日朝鮮人運動史研究会関西部会(代表・飛田雄一)

 A朝鮮近現代史研究会(代表・水野直樹)

郵便振替<00970−0−68837 青丘文庫月報>年間購読料3000

     他に、青丘文庫に寄付する図書の購入費として2000円/年をお願いします。

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●青丘文庫研究会のご案内●

 ■第259回朝鮮近現代史研究会

  5月11日(日)午後1時〜3時

「植民地朝鮮における朝鮮人労働者(その6)

1934年における中国人労働者の入国制限問題」 堀内  稔

 ■第303回在日朝鮮人運動史研究会関西部会

  5月11日(日)午後3時〜5時 

 @「マンガン記念館のこと」  李 龍植

 A「ウトロまちづくりにむけて。近況報告」斉藤正樹

 ※会場 神戸市立中央図書館内 青丘文庫  TEL 078-371-3351

 

<巻頭エッセー>

済州島四・三事件

    −いつまでも忘れられない悲しみ―      張 允植

 

  龍頭岩(ヨントゥアム)の暁

 漢拏山(ハンラサン)の壮烈な 烽火の焔も そのいわれも

 強風に曝され いつしか すでに消え去り

 霧深い中山村で活動した パルチザンの竹槍も

 今や 内外の閑良人(ハンリャンびと)のゴルフクラブとなり

 忘却の彼方で 振舞っている様子

      

 漆黒の闇の海では 漁火が霊光のように灯り

 念仏の長い数珠のように 東西に連なる

 龍頭岩では 絶え間なく 押し寄せてくる

 波濤の潮騒に堪えながら 力強く

 凛々しい賛美歌が 聞こえてくる

 どす黒い岩礁の片隅では 北斗七星を仰ぎ見て

 祈祷師(シンバン)たちが 祈りながら 焼()べる焚き火が

 海風に いまにも消えそうに か細くたなびく

 

 今、半世紀、いつしか歳月が流れ去り

 空しく 死地に追われた 数多くの英霊たちに

 彼らが 真心込めて 聖歌を唄いながら

 祈祷を捧げているのか どうか それは、まことに

 「ナヌン モルクダマスム!」*

      19991014日暁

    龍頭岩のほとりから海を望みながら  

  *「私にはわかりません!」と意味する済州島の方言

 

 私は金大中政権下になってやっと韓国に往来出来るようになり、半世紀振りに済州島を訪問した。龍頭岩の前の現代アパート(親戚の住い)の5階に泊まるが夜明け前に目が覚めて窓から暗い海を見詰めていると何故かとめどなく涙が流れ止まらない。上記の詩はその時、朝方に認(したた)めておいた詩である。私の済州島訪問は解放前に母親に連れられ二度訪問したと聞くが、幼かったのか最初の時の記憶はまったくない。二回目は幼稚園の頃に行った時の記憶はかすかに残っている。

 船着場に迎えに来た祖母と荷車の馬車に乗って三陽里に向かう道程でトラックやバスが通り過ぎる時に猛烈な砂埃にまみれた記憶だけが残っている。四・三事件のことは両親ともども身内や親戚が事件に巻き込まれ犠牲になったという悲報が伝わるたびに沈痛な思いをしたので、とても他人事のように思えなかった。九死に一生を得て逃れてきた親戚や友人から夜を明かして事件の顛末を聞きながら憤慨とやるせない思をしたことが多々あった。

 半世紀ぶりに見る済州島はそれこそ別天地になっていた。馬車で1時間掛かった道程が車では15分で到着。北から南へ漢拏山(ハンラサン)を越える道路三本となり立派に舗装されていた。島も一周して観光スポットのロケーションも見たが素晴らしい。まさに観光の島、新婚旅行のメッカといわれるにふさわしい島だと思えた。しかし晴天の漢拏山の威容や島を取り巻く海の青さの自然の景観を見ながら感動極まるが何か心の底から晴れやかな気持ちになれないものがあった。心の中に四・三事件の悲しみのなごりが沈殿していて溶解出来ずにいたからだ。翌年の2000年1月に、半世紀ぶりに「四・三特別法」制定、公布された。盧武鉉政権下の200310月過去の国家権力の過ちに対して四・三抗争の遺族および島民に謝罪した。やっと来るべき時が来たという思いがあった。半世紀も地下に埋もれた四・三が地上に復活したのである。地中深く沈殿していて死に絶えなかった記憶がようやく蘇り語り始めたのだ。以降、暗い過去史に対する徹底した真相糾明の基に真の和解と統合の時代を開いていくだろうと思っていたが、李明博政権が登場すると四・三特別法の「改正」や四・三委員会廃止の動きなど過去史整理どころか事態は逆行の兆候が見えてきた。新政府は問われるべき歴史に対しても実利主義を貫く積もりか。これは守旧勢力の歴史に対する反乱といえる。

 

■第255回朝鮮近現代史研究会(2007129日)

「朝鮮人軍人の全体像について

   ―陸軍特別『志願』兵を中心に―」  塚ア昌之

 

 私は1944年度から始まった朝鮮人徴兵制度の勉強をしてきたが、その前史である朝鮮人陸軍特別「志願」兵の実態を調べる必要性を感じ始めた。日本では「志願」兵の導入過程への研究はあるが、その悲惨な体験については何人かの朝鮮人の証言が翻訳されているだけで、全体像ははっきりしてこなかった。そこで、連隊史などや、日本が韓国に引き渡し、韓国の国家記録院で閲覧できる軍人・軍属名簿の一部(特に留守名簿)などの資料を調べてみた。

 19382月に勅令「陸軍特別志願兵令」が出され、朝鮮人「志願」兵の採用が始まった。「志願」といいながら、様々な強制や数合わせが行われたことは、当時の国会答弁などからも明らかである。1938年〜43年に16,830名が徴兵された。そのうち約56%にあたる9,410名が朝鮮軍に配属されたが、戦局の悪化に伴い、次々と南方に転用されていった。第19師団がフィリピン、第20師団が東部ニューギニア、第30師団がミンダナオ、第49師団がビルマと何れも激戦地であり、この計4師団で6,300名近い朝鮮人「志願」兵が動員され、約70%の約4,400名が死亡した。特に19431月から東部ニューギニアに動員された第20師団の被害は大きく、約1,850名の内90%弱の1,600名以上が死亡した。

 とは言いながら、死亡者数を確定するのは難しい課題である。第20師団では戦死、戦傷死は25%程度にすぎず、75%近くが餓死、体力衰弱による部隊からの脱落による死亡であった。いつ、どこで亡くなったのかも不明な兵士が大量に存在する。留守名簿では、数多く存在する「認定不能者」、「生死不明者」を死亡者に数えている場合も、生存者に数えている場合もある。死亡と認定されたにも関わらず帰国した兵士、逆に「生存見込み」とされているにも関わらず帰らなかった兵士も多数存在する。靖国「合祀」の問題でも「死亡」や「戦病死」となっているのに、「合祀」されていない朝鮮人兵士もかなり存在する。また、戦死者・戦病死者は普通、供託金はあると考えられてきたが、供託金のない者も存在する。朝鮮人兵士たちの名簿上の処理はかなり杜撰に行われてきたと推測される。

 死亡情報さえ、伝わらなかった遺族も多いと思われる。日本政府が公表した朝鮮人軍人・軍属の死亡者は約22,000名であるが、そのうち、日韓基本条約締結後に韓国政府から補償を受け取れたのは8,600名にしかすぎず、それも一人30万ウォンに過ぎなかった。遺骨もほとんど返っていない。海外戦没者の未帰還遺骨の多くがフィリピン、東部ニューギニアである。第20師団では2万名をこえる死者のうち約1,200体の遺骨が日本政府の遺骨収集団によって発見されている。比率から考えると90体近い遺骨が朝鮮人と考えられるが、この遺骨のほとんどは千鳥が渕戦没者墓苑に合葬されている。残りの1,500名近い朝鮮人兵士の遺骨はまだ、ジャングル等に放置されていると思われる。

 その他、留守名簿を見れば、現在、日本政府が主張している朝鮮人軍人・軍属数24万人は誤りでありことは明白であり、36万人説が正しいことを説明した。

 まだまだ、全体像は闇の中である。真相を解明するためには日本政府が所有している資料の一刻も早い全面公開が望まれる。

 

     <神戸港 平和の碑>建立の集い

  ●日時:2008年5月15日(木)午後6時30分

  ●会場:神戸学生青年センターホール ●参加費:無料

  ●プログラム:・開会のあいさつ 調査する会代表・安井三吉/・経過報告 事

  務局長・飛田雄一/・報告 朝鮮人関係 孫敏男/中国人関係 村田壮一/連合

  国軍捕虜関係 平田典子/・建立のための提案 副代表・徐根植/・アピール 

  中国人強制連行裁判の動向 副代表・林伯耀ほか/・閉会のあいさつ 神戸華僑

  総会名誉会長・林同春

  ●主催:神戸港における戦時下朝鮮人・中国人強制連行を調査する会

    〒657-0064 神戸市灘区山田町3-1-1 神戸学生青年センター内

    TEL 078-851-2760 FAX 078-821-5878

    ホームページ http://ksyc.jp/kobeport/ e-mail hida@ksyc.jp

 

■神戸学生青年センター/朝鮮史セミナー/「韓国・大統領論」

   講師:金世徳さん(政治学博士、兵庫県立大学非常勤講師)

@6月11日(水)午後7時 李承晩、尹ボ善   会場:神戸学生青年センター

A6月25日(水)午後7時 朴正煕、崔圭夏、全斗煥、盧泰愚

B7月9日(水)午後7時 金泳三、金大中、盧武鉉、そして李明博

 

■神戸・南京をむすぶ会&兵庫在日外国人教育研究協議会・第12回訪中

南京・瀋陽・長春フィールドワーク

  2008年/(A)8月13日〜20日(7泊8日)南京・瀋陽・長春

       /(B)8月13日〜17日(4泊5日)南京・上海

  ■旅行代金

  (A)185,000円(大学生 165,000円、含空港税・燃油費)

  (B)138,000円(大学生 123,000円、含空港税・燃油費)

  旅行保険4000円の加入をお勧めします。

  一人部屋希望者は(A)30,000円、(B)20,000円追加です。

     ※東京発着の場合は、A日程25,000円、B日程29,000円プラス。

  ◆主催 神戸・南京をむすぶ会&兵庫在日外国人教育研究協議会

  ◆申込み先 神戸・南京をむすぶ会 〒657-0064 神戸市灘区山田町3-1-1 

   神戸学生青年センター内 TEL 078-851-2760 FAX 821-5878

 

【今後の研究会の予定】

 6月8日(日)、在日(鄭祐宗)、近現代史(未定)。7月13日(日)、在日(山根実紀)、近現代史(未定)。8月は休み。研究会は基本的に毎月第2日曜日午後1〜5時に開きます。報告希望者は、飛田または水野までご連絡ください。 

【月報の巻頭エッセーの予定】

 6月号以降は、足立龍枝、太田修、金慶海、斉藤正樹、坂本悠一、高野昭雄、塚崎昌之、土井浩嗣、中川健一、玄善允、松田利彦、三宅美千子、吉川絢子、李景a。よろしくお願いします。締め切りは前月の10日です。

【編集後記】

           みなさん、いかがお過ごしでしょうか。ゴールデンウイーク号?の月報です。

           飛田雄一 hida@ksyc.jp

 

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