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青丘文庫研究会月報<220号> 2008年2月1日

発行:青丘文庫研究会 〒657-0064 神戸市灘区山田町3-1-1

()神戸学生青年センター内  TEL 078-851-2760 FAX 078-821-5878

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 @在日朝鮮人運動史研究会関西部会(代表・飛田雄一)

 A朝鮮近現代史研究会(代表・水野直樹)

郵便振替<00970−0−68837 青丘文庫月報>年間購読料3000

     他に、青丘文庫に寄付する図書の購入費として2000円/年をお願いします。

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●青丘文庫研究会のご案内●

 ■第256回朝鮮近現代史研究会

  2月17日(日)午後1時〜3時

  「都市におけるマダンの意味−韓国ソウル・大学路のストリー

   ト・ミュージックからみるマダンの文化」(仮題) 水谷清佳

 ■第300回在日朝鮮人運動史研究会関西部会

  2月17日(日)午後3時〜5時 

  「金時鐘『日本風土記』について」 浅見洋子

 ※会場 神戸市立中央図書館内 青丘文庫  TEL 078-371-3351

 

2008113日 コリアン・マイノリティ研究会と在日朝鮮人運動史研究会関西部会の共催で開催した伊丹空港中村地区でのフィールドワーク。案内は、中村地区自治会副会長の朱宗燮さん

 

●第253回朝鮮近現代史研究会(20071014日)

植民地下朝鮮における中国人労働者−技術系労働と中国人

堀内 稔

 

 これまで植民地朝鮮における中国人労働者のシリーズとしてこの研究会に、水力発電工事や鉱山などで働く労働者の実態を発表した。

 これらはいずれも単純肉体労働者を中心に扱ったもので、これらの労働者は出稼ぎ労働的性格が強く、朝鮮人労働者を脅かす存在と見られていた。これに対し、技術を持った労働者の実態はどうだったのか。今回は労働の中でも比較的技術を要するとみられる石工、大工、左官などについて、日本人や朝鮮人の技術系労働者と、あるいは単純肉体労働者と比較しながら、その実態について報告した。

 朝鮮には古くから中国人の土木建築請負業者がいて、王宮の工事を営んだり外国人の建築物の大半を請け負っていた。こうした工事では、石工、左官、大工などの技術系労働は中国人労働者が担い、単純肉体労働は朝鮮人が担ったという。こうした技能系労働者に対し植民地当局は、「支那人大工、左官の如きは技能に於て遠く朝鮮人職工の及ばざる処である」(朝鮮総督府庶務部調査課『朝鮮に於ける支那人』)、「石工の如きは鮮内に於ける凡ゆる工事に喰入り殆ど独占状態に在って、内鮮人労働者の之に対抗することは全く不可能な状態にある」(警務局保安課『高等警察報 第三号』)などと報告しており、彼らが朝鮮において特異な存在であったことを示している。

 中国人労働者の分布は平安北道と京畿道の2道が最も多く、咸鏡南北道、黄海道、平安南道がこれに次ぐ。各道を通じて単純肉体労働者の中で土工、人足の占める比率は8割で、技術系労働者の中では大工、左官、石工、煉瓦積、煉瓦工、家屋葺が約3割を占めているとされるが、その分布には地方特性があり、たとえば京畿道では技術系労働者の数は単純肉体労働者のそれよりも多く、その他の道では反対に単純肉体労働者が技術系労働者の数より多く、その種類の上からは土工が目立って多い。

 彼ら技術系労働者の賃金は、『朝鮮に於ける支那人』によれば「大正十二年中の労銀は大工二円より二円七十銭、石工二円より三円、左官二円二十銭より二円八十銭、煉瓦職二円二十銭より三円五十銭、木挽二円より三円、鍛冶稙二円より二円六十銭、ペンキ塗二円二十銭より三円等であって、人夫は九十銭より一円十銭である」となっており、当然のことながら単純肉体労働者よりもかなり高いことがうかがえる。

 技術系労働者の民族別賃金、すなわち日本人、中国人、朝鮮人の賃金を比較すると、中国人と朝鮮人の賃金はほぼ等しく、日本人はほぼその倍であった。ただ、1933年末の咸鏡南道土木課調査による民族別労働者の賃金比較では、20年代に比べると全般的な賃金低下が顕著で、とくに中国人の石工と木工は朝鮮人に比べてもかなり低い数字が出ている。30年代はじめにおける賃金の低下は不況の影響によるものと考えられるが、中国人の賃金が朝鮮人より低いのは咸鏡南道の地方的特性なのか全国的な傾向なのかはわからない。

 朝鮮土木建築協会「朝鮮工事用各種労働者実情調」よれば、大部分の労働者は借家あるいは飯場に居住しているが、日本人の場合借家の比重が高いのに対し中国人は飯場が圧倒的に多いという。飯場に居住する労働者の大部分は独身者と見てよい。ある朝鮮人石工の食生活をみると、「食事は主食としてパン大3個(180匁)と副食の野菜を朝昼夕の3食食べ、間食に果物、酒は濁酒約1合、たばこは「メープル」1個」という調査結果だ。他にも中国人石工をルポした新聞記事に、「お腹がすけば餅一つを食べ口をぬぐうだけ」とあるように、故郷に送金するためかなり質素な生活をしていたことがうかがえる。

 以上、研究会での発表内容を要約してみた。中国人労働者の資料が少なく、断片的にならざるを得なかったが、少し気になるのは1933年末の咸鏡南道土木課調査で朝鮮人よりも中国人の賃金が低くなっていることである。なぜなのか。今後の研究課題にしたい。

 

■青丘文庫の新着図書コーナー/200710

 

4.24阪神教育闘争記念碑を建てる会第2回総会&

 阪神教育闘争60周年/記念講演会

 「4.24教育闘争神戸地方裁判所での裁判(C級)の判決文の分析」

                  講師:辛 恩 英(シンウニョン)さん

   (真実和解のための過去事調査委員会民族独立調査局 調査官)

○と き−2008420日(日) 1430

○ところ−ピフレA会議室(JR新長田駅南側) 資料代−500円

4.24阪神教育闘争記念碑を建てる会 神戸学生センター内

090-8539-0473(事務局―池田)ファックス078-736-2007 chegi@alto.ocn.ne.jp

 

●神戸学生青年センター/朝鮮史セミナー●

神戸市立外国人墓地に朝鮮ゆかりの人物をたずねるハイキング

                         with キムチチゲ

3月20日(木、春分の日)/集合:午前10時、地下鉄新神戸駅北出口改札前/コース(約10キロ、初心者コース):新神戸駅→布引の滝→市が原→修法が原→外国人墓地→大龍寺→市章山→錨山→ビーナスブリッジ→元町駅または三宮駅/参加費:1000円(含む、資料代、キムチチゲ代。ビール代は含まれません。)/案内人:飛田雄一(神戸学生青年センター館長)/定員:20名/持ち物:おにぎり(おかずはキムチチゲ)ほか/申込み:3月10日までにセンターまで。

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朝鮮史セミナー

「済州島四・三事件」の私(仮題)

4月11日(金)午後7時/講師:金時鐘さん/会場:神戸学生青年センターホール

 

【今後の研究会の予定】

 3月9日(日)、在日(未定)、近現代史(李景a)。研究会は基本的に毎月第2日曜日午後1〜5時に開きます。報告希望者は、飛田または水野までご連絡ください。 

【月報の巻頭エッセーの予定】

 3月号以降は、佐藤典子、田部美智雄、張允植。よろしくお願いします。締め切りは前月の10日です。

 

【編集後記】

           1月の伊丹・中村地区フィールドワーク、とても寒い時期でしたがとても充実したものでした。本月報では写真を一枚はりつけました。

           寒い日が続きます。みなさん、健康にご留意ください。

  飛田雄一 hida@ksyc.jp

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