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青丘文庫月報  2005年2月1日(193号) PDFファイル

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●青丘文庫研究会のご案内●

■第268回在日朝鮮人運動史研究会関西部会

2月13日(日)午後1時〜3時

「朴泳孝を支援した日本人たち」 金慶海

■第229回朝鮮近現代史研究会

2月13日(日)午後3時〜5時

「韓国社会における朝鮮族労働者と地域住民との共存のあり方」 金永基

※会場 神戸市立中央図書館内 青丘文庫

●巻頭エッセー 

大学における朝鮮研究のネットワーク 水野直樹

 「冬ソナ」ブームのおかげで、朝鮮語(この場合は「韓国語」といった方がいいかもしれないが)を学ぼうとする人が増えている。NHKの「ハングル講座」(これも変なことばであるにもかかわらず、いまや定着してしまっている)のテキストは、英語に次ぐ販売部数になったといわれている。

 大学での朝鮮語(韓国語、韓国・朝鮮語、コリア語、「ハングル」などと呼んでいるところも多い)授業の受講者も去年は大幅に増えたという話をよく聞く。授業時間数を増やそうとしても、朝鮮語講師を探すのが難しいという。20年前、30年前には考えられなかったことである。

 しかし、「冬ソナ」から出発して、朝鮮に対する関心を深めようとする学生がいたとしても、朝鮮文化や朝鮮史の研究をしている教員がどの大学にもいるわけではない。朝鮮研究に関わる大学教員が増えているとはいっても、「冬ソナ」のような爆発的なブームに追いつくはずもない。性急にブームに追いつこうとするよりは、地道に研究を積み重ねていくしかないであろう。

 と思って身の回りを見てみると、私の勤務する京都大学でも朝鮮に関わる研究をしている教員が増えてきている。10年ほど前は、私と経済史の堀和生さんくらいだったのが、この5年くらいの間に増えて、人文・社会系の分野で何らかの形で朝鮮研究に関わる教員が現在では十指に余るほどになっている。とはいっても、京大という巨大組織の中では僅かな数でしかないし、それも各学部・研究所に分散しているという状態である。

 そこで思いついたのが、京大の教員や院生、それに外国人研究員などのネットワークをつくるというアイデアである。中核になるような学科あるいは研究センターをつくるのは容易でないが、緩やかなネットワークの形で朝鮮に関わる教育や研究の現状・課題に取り組んではどうか、というものである。

 とりあえず10人あまりの専任教員にその旨呼びかけをしたところ、積極的な賛同を得て、「京都大学朝鮮・韓国学教育研究ネットワーク」(京大のKorean Studiesのネットワークという意味で、略称をKSNetとしている)を発足させた。6つの学部・研究科(大学院)・研究所にまたがって11人の教員がメンバーとして加わっている。朝鮮語科目の改善、一般教養的な講義の開設、各学部で行なわれている専門科目に関する情報提供、京大所蔵の朝鮮関係資料の整理などが当面の課題である。

 同時に、院生・外国人研究員(さらには京大以外の研究者・院生)にも参加してもらえる研究会も開催したいと考えている。さまざまな専攻分野に分かれる教員・研究者・院生などが顔を合わせる機会になればいいと思う。

 差し当たり、これまであまり知られているとはいいがたい2つの資料を取り上げたシンポジウムを2月に開くことにしている。ネットワークは、京大の中で閉じてしまうものではなく、外にも広がっていくものと位置づけているので、多くの方々の参加をお願いしたい。

 

●●京都大学朝鮮・韓国学教育研究ネットワーク(KSNet-Kyodai

シンポジウム「京都大学所蔵朝鮮関係資料の再発見」

  日時 2005219日(土) 午後130分−445

  会場 京都大学 時計台記念館 国際交流ホールU(京大本部構内)

    (交通) 京阪電車「出町柳」駅から徒歩約10

      市バス「京大正門前」または「百万遍」

  参加無料  

(1)附属図書館所蔵「(朝鮮)金石集帖」

      (京都大学文学研究科博士課程)

     「朝鮮金石文集成『金石集帖』(京大本)の基礎的研究」

(2)総合博物館所蔵「韓国戸籍成冊」

     水野直樹 (京都大学人文科学研究所・教授)

     「『韓国戸籍成冊』に見る朝鮮人の名前」

     趙 (済州大学社会学科・教授)

     「朝鮮末期京江地域の住民構成―『韓国戸籍成冊』を通して―」

*午前中は、ワークショップ「京都大学における朝鮮・韓国学教育研究の現状と課題」を開催します。ワークショップへの参加は事前連絡が必要です。

  (主催)京都大学朝鮮・韓国学教育研究ネットワーク(KSNet-Kyodai

  (連絡先)京都大学人文科学研究所 水野研究室

            電話075-753-6925   E-Mailksnet@zinbun.kyoto-u.ac.jp

  (ホームページ)http://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~ksnet/

 

第265回在日朝鮮人運動史研究会関西部会(2004.11.14

「朝鮮人・中国人の強制連行・強制労働を考える

 全国交流集会in北海道」に参加して     塚ア昌之

 

 10月9〜11日、札幌と戦時中、朝鮮人強制連行者たちによって建設され、当時東洋一と言われた朱鞠内(しゅまりない)ダムを結んで、上記の交流集会が開催された。9日午後と10日の夜、11日の昼が報告・討議に、10日の朝から夕方までと11日の午前中がフィールドワークにあてられた。

 今回の交流集会のサブタイトルは「東アジアの真の和解と平和のために―戦後補償の実現を―」であった。冷戦構造が終わり、戦後補償裁判が数多く提訴されるようになり、少しずつではあるが、判決内容は前進をとげつつある。それとともに、被害者の高齢化により、一刻も早い完全な補償が勝ち取ることが望まれる現状を反映したものである。1990年にこの集会が開始されたときは、別名「トンネル会議」と呼ばれ、朝鮮人強制連行者の労働が象徴的に示されている地下壕の発見→調査・研究→保存・公開を主要なテーマとしていたことを考えると、ここにも歴史の流れが感じられる。

 9日の全体会では、真相究明、戦後補償裁判、国内立法、遺族探しと遺骨返還、保存継承等の報告が行われた。韓国で今年、制定された「日帝強制占領下強制動員被害者真相究明等に関する特別法」に力を尽くした崔鳳泰弁護士からの報告もあった。

その後の討議の中で主要な論点となったのは、遺骨の問題であった。現在、日本に残されている戦時中の朝鮮人の犠牲者の遺骨は数千体とも考えられている。市民団体の手によって、一部の返還は果たされているが、日本政府や責任ある企業がその返還に本腰を入れたことはない。戦後補償の解決が図られなければならないのは当然であるが、遺骨問題は人道上の問題からしても、政府、責任ある企業も無視・否定しようがない問題である。遺骨問題の解決は戦後補償の解決の糸口にもなっていくであろう。

 フィールドワークも遺骨の問題を深く考えさせるものであった。北海道帝国大学が「優生学」の名の下に墓あばきをして集めた約1000体のアイヌ納骨堂。千島樺太交換条約締結後、樺太アイヌ約800名が強制移住させられ、10年間に半数近くが死亡した江別の傾きかけた合葬墓。鉱山から逃亡、その後13年間の穴居生活を続けた中国人強制連行者劉連仁さんの生還記念碑。北海道「開発」に使用された囚人が収監された樺戸集治監とその墓地。戦時中、多くの朝鮮人、中国人が強制労働させられた美唄(びばい)炭鉱と事故現場の地底に眠る遺骨。戦時中、深川市のタコ部屋労働で死亡、放置されていた日本人と朝鮮人の遺骨の発掘場所。そして、最後に、現在、日韓と在日、アイヌの若者が強制連行者たちの遺骨を捜し、掘り起こす運動を続けている朱鞠内ダム。様々な問題が重層的に出てくる北海道ならではのコースであったが、遺骨はいずれも国家暴力の犠牲者であり、過去が未だに清算されていないことの証人であることを痛感したフィールドワークであった。

 

第227回朝鮮近現代史研究会(2004.11.14
日本における中国朝鮮族の生活と意識 金明姫

 本報告の目的は、日本における中国朝鮮族の生活と意識の実態を解明し、その社会的意義を考察することにある。1980年代以降、中国・東アジア全体の社会・経済変動の渦中で、多数の中国朝鮮族が中国東北地方・朝鮮族集住地域から流出しつつある。

 筆者は日本在住の中国朝鮮族(就学生・留学生・卒業後の社会人)39人を対象に、面接・メールによるインテンシヴな聞き取り調査を行った。来日するのは中国朝鮮族全体の中で高卒以上の若者で、日本留学を通してその内部での格差は拡大再生産されている。中国朝鮮族は、中国東北地方−日本−中国という地域間移動を通して、中国人・日本人・韓国人・在日韓国朝鮮人などとの異文化接触の中で、階級上昇・自己実現・アイデンティティを模索している。しかし、その内部は一枚岩ではなく、階級・階層差に基づく多重構造と不安定が見られる。

 

【今後の研究会の予定】

2月13日、在日・未定、近現代史・李景a、3月13日、4月10日、

※研究会は基本的に毎月第2日曜日午後1〜5時に開きます。報告希望者は、飛田または水野までご連絡ください。

 

【月報の巻頭エッセーの予定】 

2005年3月号以降は、松田利彦(2/10締切)、文貞愛、森川展昭、山田寛人、横山篤夫、李景a。よろしくお願いします。締め切りは前月の10日です。

 

<編集後記>

           1月号は、ハガキ月報で失礼しました。2005年もよろしくお願いします。2月号の月報をお届けします。

 

           『韓日民族問題研究』が送られてきましたので目次を紹介します。韓日民族問題学会(ソウル)は日本留学中に在日朝鮮人運動史研究会関東部会のメンバーであった金広烈さんだ代表をされている学会で、一昨年の滋賀県立大学での在日朝鮮人運動史研究会大会にもメンバーが韓国から参加されました。日本人の会員もいます。今年8月には滋賀大会の継続として釜山で合同の大会を計画しています。86日〜7日の予定です。いまから予定を入れておいてください。

  飛田雄一hida@ksyc.jp

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