青丘文庫月報190号(2004年9月1日) PDFファイル版

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●青丘文庫研究会のご案内●

■第264回在日朝鮮人運動史研究会関西部会
9月12日(日)午後3時〜5時
「ウトロ(京都府宇治市)の歴史と現状」

             斉藤正樹

■第226回朝鮮近現代史研究会
9月12日(日)午後1時〜3時
書評、木村幹『韓国における「権威主義的」体制の成立 − 李承晩政権の終焉まで −』 堀添伸一郎

※会場 神戸市立中央図書館内 青丘文庫

 

●巻頭エッセー
現地で見た台湾総統選挙
藤永 壯

 

 勤務先から1年間の在外研究の機会を与えられ、昨年10月から台北に滞在している。研究上の目的をいろいろ述べることはできるのだが、何よりも朝鮮以外の日本の植民地支配を経験した社会に身をおくことで、自らの研究の方向を見つめ直したいという気持ちが強かった。台湾は庶民のバイタリティーがあふれる魅力的なところで、十数年前に留学した韓国での生活体験の記憶とも重ね合わせながら滞在を楽しんでいる。

 印象的な出来事は数多くあるが、ここでは総統選挙をめぐる激しい政治闘争について感じたことを、覚え書きのつもりで記しておきたい。韓国で国会の大統領弾劾に対する抗議運動が盛り上がっていた今年の3月、台湾では総統選が行われ、民進党の現職陳水扁氏が国民党の連戦氏を僅差で破って再選を果たした。しかし投票日前日に遊説中の陳氏が狙撃されるというショッキングな事件が起こり、連戦陣営は選挙が不公平な条件のもとで実施されたとして敗北を受け入れず、野党支持者たちが総統府前道路に居座って激しい抗議活動を繰り広げる事態となった。狙撃事件の「真相」は、この原稿を書いている7月上旬の時点でも、まだ全く何も解明されていない。

 実は私は前回の総統選(2000年)の折もたまたま台北に滞在しており、そのときの雰囲気と比べて台湾社会が様変わりをしたことを感じないわけにはいかなかった。

 まず「台湾独立」を綱領とする民進党を支持した有権者が、総統選で初めて半数を超えた点である。前回当選した陳水扁氏の得票率は39.3%で、国民党の内紛・候補者分立による「漁夫の利」を得た側面は否定できず、立法院(国会)でも民進党は過半数に遠く及ばない少数与党政権であった。しかし今回は大激戦ながら、陳氏の得票率はついに50%に届いたのである。陳水扁政権のもとで台湾社会の「台湾化」は確かに加速したものの、かと言って性急に「台湾独立」をめざすような大胆な政策転換は行われず、大陸との経済関係もいっそう拡大した。これまで民進党への投票をためらっていた有権者も、今回は「安心」して陳水扁氏に票を投じたことが、こうした結果をもたらしたと言えるだろう。

 しかし一方で前回のように、台湾の子・阿扁(陳水扁氏のニックネーム)を震源に台湾社会をおおった熱気とも緊張感ともつかない高揚した雰囲気を感じることはできなかった。国民党などの抗議行動に対して、陳水扁氏自身が積極的に事態収拾に乗り出すことはなかったため、人びとの関心はどうしても抗議活動の側に集中した。民進党の戦略は「我慢比べ」の結果として、陳氏の当選を既成事実化するうえでは有効であったかも知れないが、本来主役となるべき陳氏の影をまことに薄いものにしてしまった。気の早いマスコミは、人気の高い馬英九台北市長(国民党)を次回総統選の有力候補として報道することに、むしろ熱中しているように見える。

 最後にテレビのニュースを見ていて、印象に残ったエピソードを一つ紹介しておこう。総統府前に居座った野党支持者たちが連日抗議集会を開く中、ある日なぜか民進党支持者と思しき中年女性が演壇に立ち、陳水扁氏を弁護する演説を行って聴衆の大顰蹙をかったことがあった。その女性は警官に保護されながらその場を立ち去ったのだが、憤懣やるかたなく女性を追っかけた聴衆の中から「あいつは日本人だろ!」という罵声が浴びせられたのである。

 「台独派」の背後に日本がいる。少なくともそう信じている台湾人がいるらしい。このことは私にとってちょっとした驚きだった。台湾と日本との間の「ねじれた」関係は、朝鮮半島と日本との関係とはまた違った意味での複雑さをはらんでいることに、改めて気づかされた出来事でもあった。

 

<第225回朝鮮近現代史研究会(2004年4月18日)>

「創氏改名」における差異化のベクトル   水野直樹

 

 創氏改名」をめぐっては、その強制性を否定する発言を日本の政治家がするなど、社会問題・外交問題となっている。「創氏改名」はよく知られているにもかかわらず、研究そのものはそれほど多くない。植民地支配全体の歴史的性格と関連づけて、今後様々な角度から研究しなければならない課題である。

 「創氏改名」は朝鮮人に日本的な氏名をつけさせる政策と理解されているが、実際には日本人と区別することができない氏名よりも、「朝鮮人らしい氏名」をつけさせる方向で実施されたのではないか、という疑問が本報告の出発点である。「併合」直後に朝鮮人が「内地人に紛らわしい姓名」をつけることを禁止する措置がとられていたが(拙稿「朝鮮植民地支配と名前の「差異化」――「内地人ニ紛ハシキ姓名」の禁止をめぐって」山路勝彦・田中雅一編『植民地主義と人類学』関西学院大学出版会、2002年)、それは植民地支配秩序を維持するためであり、取締りなどに便利な仕組みをつくるためであった。「創氏改名」の政策案に対して朝鮮総督府警務局などが反対をしたというのも、日本人と朝鮮人の名前に差異を残しておくべきだという認識からであった。

 「創氏改名」は、日本的家族制度をあらわす氏制度創設の面と、名を日本人風に改めるという面とに分けて考えねばならないが、前者については、総督府当局は朝鮮人家族に2字からなる氏をつけさせようとし、そのために強制力をも使った。しかし一方で、当局は、「日本既存の氏を踏用せしむる趣旨にあらざること」に注意を促し、朝鮮の地名や従来の姓にちなむ氏を設定するのが望ましいとしている。門中(親族)会議で氏を決定するのは氏制度の趣旨に反するとしながら、氏設定届けを増やすためには門中会議で決めることを認める方向に変わったことも、本貫などにちなむ氏が多くなる結果を生み出した。これらによって、2字からなる「朝鮮的な氏」をつける人々が多くなったと考えられる。

 一方、改名に関しては、当局はそれほど重視していなかった。むしろ、「名は出来るだけそのまヽにして国語の訓で読む」(緑旗連盟のパンフレット)ことが推奨された。氏の設定届けを出したのが朝鮮全戸の約80%であったのに対して、改名の申請は約10%にとどまった。1930年代末までとられてきた「内地人に紛らわしい名」の禁止政策の下では、朝鮮人と日本人の名には差異が設けられてきたことを考慮すると、1940年以降も名によって朝鮮人であることがわかる人々が大半であったのである。

 「創氏改名」が同化・皇民化をめざす政策であったことは間違いないが、その実態を見ると差異を残しておくという側面も色濃くあったことにも注意を払わねばならないといえよう。

 

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2004年10月9日(土)〜11日(月)
強制連行全国交流集会2004 北海道
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●日時  2004年10月9日(土)〜11日(月)

1日目  10月09日  「現状と問題提起・全体討議(その1)」

   場所:かでる2・7(札幌市中央区北2条西7丁目)4F大会議室

13:30 開会

13:40〜19:00 全体会

  1. :真相究明(洪祥進氏)/2. :戦後補償裁判(有光健氏)

  3. :国内立法(川村一之氏)/4. : 遺族探しと遺骨返還:(殿平善彦氏)

  5. :保存敬称(※実行委が依頼した地域)/6. 中国人強制連行の補償基金:(札幌

  の弁護士予定)/7. 韓国特別法:(崔鳳泰:チェ・ボンテ氏)

19:30〜21:00 交流夕食会(アサヒビール園)

2日目 10月10日  「各地フィールドワークと活動交流」

09:00 出発

  (※活動交流はフィールドワーク終了後バスの中で行います)

20:00 朱鞠内交流ライブ

3日目  10月11日  「朱鞠内フィールドワーク・全体討議(その2)」

09:00〜11:30 朱鞠内フィールドワーク

12:30〜15:00  全体会

  1. バスごとの報告,/2. 全体討論「今後に向けて」/3. 共同声明文採択

● 参加費: 25,000円(道内交通費、宿泊費、食費、運営費、交流会費など)

   9月末日までに振込(振込先:札幌信用金庫川沿支店

      普通預金・口座番号4206093 受取人 全国交流集会)

● 参加申込み: 9月20日(月)までFAXかE−mailでお願いします。

      〒005-0832札幌市南区北の沢9町目15−22堀口 晃

            TELFAX:011-571-5876    Email:ab4k-hrgc@asahi-net.or.jp)

 

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神戸学生青年センター朝鮮史セミナー・2004年秋

「新史料で考える日本の朝鮮支配」

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@     11月10日(水)午後6時30分〜8時     

 「韓国併合」は朝鮮人が望んだのか?兵庫朝鮮関係研究会会員・金慶海氏

A     11月17日(水)午後6時30分〜8時       

 「強制連行」はあったのか?なかったのか?高校教員、15年戦争研究会会員・塚崎昌之氏

B     11月24日(水)午後6時30分〜8時     

 「創氏改名」は強制ではなかったのか? 京都大学教授・水野直樹氏

●会場:神戸学生青年センターホール TEL 078-851-2760

●参加費:600円(学生300円)

●申込み:不要です。直接会場にお越しください。

 

 

【今後の研究会の予定】

10月の研究会は、強制連行全国交流集会(北海道)のため休会です。

11月14日、在日未定、近現代史・金永基、12月12日、在日未定、近現代史・金明姫、

05年1月9日、在日未定、近現代史・林茂澤

※研究会は基本的に毎月第2日曜日午後1〜5時に開きます。報告希望者は、飛田または水野までご連絡ください。

 

【月報の巻頭エッセーの予定】 ※10月号の月報は休刊します。

11月号以降は、堀内稔、堀添伸一郎、本間千景、松田利彦、水野直樹、文貞愛、森川展昭、山田寛人、横山篤夫、李景a。よろしくお願いします。締め切りは前月の10日です。

 

 

<編集後記> 

      7月号でも台風のことを書きましたが、また大きな台風がやってきました。被害などでなかったでしょうか。台風一過でも今年の猛暑は終わらないようですね。

      10月に研究会は、北海道で強制連行交流集会が開かれるためにお休みにします。また月報も休ませていただきます。

      遅くなりましたが2004年度の青丘文庫研究会会員証ができています。申し込まれた方について研究会でお渡しできなかった方には本月報とともにお送りします。会員証は原則的に、年3000円の月報購読料を下さった方に発行しています。例外として、貧乏学生(失礼!)等、インターネットメールニュースだけていい、印刷した月報は不要という方にも、希望により発行しています。会員証未着で、ご希望の方は、原則・例外どちらでも結構ですのでお申し出ください。

      私は、今夏、神戸・南京をむすぶ会の訪中団で上海、南京、大連、旅順を訪問しました。朝鮮関係では、上海魯迅公園(旧虹口公園)の尹奉吉が爆弾を投げた現場の近く「梅亭」に記念館ができていました。小さいながらいい記念館だと思いました。また旅順では、日清戦争のときの虐殺事件の犠牲者をまつる「萬忠墓」と安重根の処刑された旅順監獄を訪問しました。とくに監獄の刑場はショッキングでした。書籍と中国語のVCD(約22分の映像、コンピュータで観ることができる)を購入してきました。

      「韓国併合」「創氏改名」「強制連行」等の歴史的事実に対する挑発・攻撃が続いています。神戸学生青年センターでは朝鮮史セミナーでこれらを取り上げます。ご参加、宣伝をよろしくお願いします。天高く馬肥ゆる食欲&読書&スポーツの秋をお元気にお過ごしください。    飛田雄一 hida@ksyc.jp

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