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青丘文庫月報・177号・2003月3月1日

図書室 〒650-0017 神戸市中央区楠町7-2-1 神戸市立中央図書館内
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郵便振替<00970-0-68837 青丘文庫月報>年間購読料3000円
※ 他に、青丘文庫図書購入費として2000円/年をお願いします。
ホームページ http://www.hyogo-iic.ne.jp/~rokko/sb.html
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●青丘文庫研究会のご案内●

●第248回在日朝鮮人運動史研究会関西部会
 3月9日(日)午後1時
「多文化教育としての在日コリアン教育
ー日本学校における教育実践の系譜① 
 所謂「一斉糾弾」前後(60年代後半~70年代初)ー」
方 政雄(パン・ジョンウン)氏

●第214回朝鮮近現代史研究会
 3月9日(日)午後3時~5時
「解放政局と左右合作運動」
李 景珉(イ・ギョンミン)氏

会場はいずれも青丘文庫(神戸市市立図書館内)

<巻頭エッセー>
求む、在日朝鮮人の生活道具!
藤井 幸之助

 全国各地で在日朝鮮人史研究をなさっているみなさんに情報をご提供くださるよう、お願いがあります。
 植民地時代、朝鮮から「日本国猪飼野 金某」宛で届いたといわれる手紙をみなさんはご覧になった方はあるでしょうか? 済州島-大阪間の定期航路があったことから、さもありなんと思われますが、どこかに実物は残っていないでしょうか?
 去年の春、大阪府吹田市にある国立民族学博物館(以下、民博)の特別展「2002ソウルスタイル 李さん一家の素顔のくらし」をご覧になった方も多いかと思います。ソウルに暮らす李さん一家のアパートが家財道具一式三千余点とともに展示室に再現された様子は壮観そのものでした。その他、韓国人の生活を理解するための様々な展示がなされていました。
 で、これとは直接は関係ないのですが、わたしは今、民博で2005年春開催(100日間ほど)予定の特別展「多民族化する日本-在日エスニックコミュニティ展-(仮称)」(委員長:民博教授庄司博史さん)で行政と在日朝鮮人関係の展示を担当しています。ほかのエスニックグループとしては中国人・ベトナム人・日系ブラジル人・フィリピン人などがあがっています(ただし、今回の展示では先住民のアイヌ人と沖縄・奄美出身者はあつかいません)。
 ここに足を運べば、けっして「単一民族国家」でない日本の姿が、日本の多民族化が一目でわかるようにしたいとスタッフ一同はりきっています。
 具体的には、在日朝鮮人の生活道具をさがしています。渡日に際して持参したカバンや衣類・書類・写真ほか、なんでもかまいません。労働に関するのものなど、いくらかあてはあるものの、まだまだこれから調査していかなければなりません。強制連行・強制労働に関するものも重要かと思います。すくない予算の中でのやりくりで、特別展期間中の借用が中心になると思います。
 今回の展示は在日朝鮮人研究の一端としても非常に重要だと考えています。アメリカやカナダには「日系人博物館」があります。横浜にはJICA(国際協力事業団)が「海外移住資料館」をつくりました。これらは専門の研究機関としても機能しています。朴慶植さんの死によって実現しなかった「同胞歴史資料館」のこともあります。一日も早く日本にも「在日朝鮮人ミュージアム」をつくることができるように、その道すがらとしても、今回の展示を成功させたいと思います。
 生活道具ほかの所在や展示のアイデアなど、どんなことでもかまいませんので、ご連絡いただければ幸いです。よろしくお願いします。 

第213回 朝鮮近現代史研究会12月8日(日)
解放初期における韓国華僑の商業資本蓄積
李正煕(京都創成大学講師)

 韓国華僑は解放後から朝鮮戦争が勃発する前までの解放初期に多くの商業資本を蓄積する。植民地後期に経済力を失った韓国華僑が、なぜ解放初期に経済力を取り戻せたかを究明するのは、韓国華僑経済史において非常に大事なことであろう。というのは、米軍政期を含む解放初期は、韓国華僑にとって、植民地期と大韓民国時代を結びつけ、両時期を照らし合わせることが出来るからである。
 解放初期における韓国華僑が商業資本蓄積を成し遂げた背景と内容は、次のようにまとめることが出来る。
 第1に、解放初期において韓国華僑は、米国と同じ連合国の中華民国の国民として、米軍政庁によって優遇された。米軍政庁は韓中貿易の担い手として韓国華僑の自由貿易活動を保障してくれた。
 第2に、韓国華僑は韓中貿易の貿易活動を通じて商業資本を蓄積し、経済力を大きく伸張させた。華僑貿易商は山東半島、香港、マカオと韓国を結びつける人的ネットワークを通じて、韓中民間貿易の取引量の約7割を独占していた。また、税関を通らぬ密貿易にも携わり、解放初期における3年間の正式・非公式交易額は1億ドルに達した。華僑貿易商が中国地域から輸入した物資は、華僑商業ネットワークを通じて流通され、それが解放初期における仁川とソウルのチャイナタウンを形成する原動力になった。
 第3に、韓国華僑が貿易業、飲食店、雑貨業などの商業を通じて蓄積した華僑資本は相当な規模であった。華僑経済の中心地であるソウルのみで3千万圓以上の会社が25個あった。仁川地域の華僑はソウルより大手華僑貿易会社が多かったので、ソウルに肩を並べるくらいの富を所有していた。

第214回 朝鮮近現代史研究会1月12日(日)
書評:朴ウンギョン著『日帝下朝鮮人官僚研究』学民社 1999年1月 367頁
堀添 伸一郎

 本書は植民地時代における総督府下の朝鮮人官僚の動態を追跡したものである。筆者は朝鮮人官僚の大韓帝国期からの連続性、形成背景、社会的性格、採用形式を中心に本書を執筆している。本書によると大韓帝国から朝鮮総督府に留任した朝鮮人官僚の比率は67.6%に上る。筆者の当初の問題意識は、李承晩政権下における官僚の動態を研究、調査することにあったが、史料上の制約に伴い関心を植民地時代に置かざるを得なかったという。
 では、本書の課題である官僚の連続性は如何なるものであったのであろうか。大韓帝国から第6共和国までの韓国政府のエリート中、前職の25.1%が官僚であった。特に第1共和国では現職官僚においては、43%が植民地期の官僚出身であった。つまり植民地期の官僚が解放以後も継続して留任、採用されたのである。
 本書の構成は、大韓帝国から総督府に留任した官僚群の履歴が169頁、総督府が採用した朝鮮人官僚の履歴が39頁。そしてこの官僚群の動態に基づく分析を踏まえて筆者が梨花女子大学に提出した博士学位論文を加筆、修正したものが140頁となっている。官僚群の履歴が6割を占めることからも、従来、大韓帝国から朝鮮総督府へ留任した官僚の具体的な履歴を綿密に追跡した研究は限られていたこともあり、本書は1次史料を詳細に調査した労作と言える。では本書の問題点は何であろうか。
 朝鮮人官僚の動態の調査期間が創氏改名が行なわれる直前の1939年までと限られていることである。総督府への官僚の連続性を考察するのであれば、40年代をも考慮せねばならない。現に官報には現職官僚の創氏改名に伴う氏名変更の通知が掲載されていたとあるから創氏改名以後の官僚群と40年代の史料とを照らし合わせて見ることも、制約があるものの一部は可能であったと考えられる。具体的には40年代、総力戦期を経験した官僚が解放後、日本人官僚の代替と同時に中核を担っていったわけであり、第1共和国の職員録との参照が理論的には可能となり得る。しかし現在、第1共和国の職員録は李承晩政権の正当性の欠如によるものか朝鮮戦争の混乱によるものかは不明であるが、確認できないようである。
 本書はこうした制約と研究の限界性を示したものであるが、制約が伴う40年代、李承晩政権下の政治エリート、官僚研究への何らかの一助となることはまちがいないであろう。

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金英達著作集【全3巻】が完結しました!(四六判/上製)

①創氏改名の法制度と歴史 2800円

「植民地下の朝鮮人に日本式の名前を強制した」という通説に対して、当時の法令にさかのぼり、行政施策、新聞報道を一つ一つ確かめながら再検討を重ねた著者の代表的研究成果の集大成。

②朝鮮人強制連行の研究 5400円

「強制連行」の名称の元に情緒的、感情的に論じられてきた「朝鮮人強制連行史研究」に徹底的な史料批判と法制度との整合性から新たなメスを入れた画期的研究。

③在日朝鮮人の歴史 2500円

在日朝鮮人の歴史を、これまでの通説、思いこみを一切排除しつつ、資料や統計にさかのぼり、丹念に検証・構築し直した著者の歩みを再構成した論集。

※特価9500円(全3冊、送料込み)で販売します。下記にご送金ください。

    郵便振替<00970-0-68837 青丘文庫月報>

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【今後の研究会の予定】
4月6日、在日・朴正伊、近現代史・松田利彦
※4月は、13日が図書館休館のため6日です。ご注意を!
5月11日、在日・三輪嘉  、近現代史・報告者未定
6月8日、在日・塚崎昌之、近現代史・報告者未定
7月12~13日、滋賀県立大学で在日研究会関東関西合同合宿の予定です。

【月報の巻頭エッセーの予定】
4月号(梁永厚)、5月号以降は、金河元、宇野田尚哉、坂本悠一、張允植、塚崎昌之、広岡浄進、福井譲、藤井たけし、藤永壮、堀内稔、堀添伸一郎、本間千景、松田利彦、水野直樹、文貞愛、森川展昭、山田寛人、梁相鎮、横山篤夫、李景珉。よろしくお願いします。

<編集後記>

●春の気配が少しは感じられる今日このごろですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。2002年度最後の月報をお送りします。(2月号は、ハガキ通信とさせていただきました。)
●いくつかの連絡をさせていただきます。①2003年度の月報購読料3000円の送金を1頁の郵便振替までよろしくお願いします。インターネットメールニュースのみご希望の方は無料です。飛田rokko@po.hyogo-iic.ne.jpまでご連絡ください。②あわせて青丘文庫図書購読募金2000円をお送りくだされた幸いです。新しい図書を青丘文庫のために購入する予算が神戸市にはありませんのでそのために募金を集めています。③在日朝鮮人運動史研究会のメンバーは年会費5000円の送金もよろしくお願いします。会員は毎年10月に刊行される『在日朝鮮人史研究』3冊を受け取ることができます。④2003年度青丘文庫研究会会員証をご希望の方は郵便振替で送金時にその旨をお書きください。5月ごろに発行します。それまでは2002年度のものをお使いください。
●3頁にありますように私たちの仲間であった金英達さんの著作集全3巻が完結しました。第3巻に民団のブックレットに収録される予定だった原稿ありますが、それは、彼の在日朝鮮人研究の集大成であり、かつ在日の若い世代への熱い想いが語られています。是非お読みください。
(飛田 雄一 rokko@po.hyogo-iic.ne.jp)

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