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青丘文庫月報・174号・2002月10月1日

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●青丘文庫研究会のご案内●

第211回 朝鮮近現代史研究会
10月13日(日)午後1〜3時
テーマ:「新聞社説に見る中国人労働者問題」
報告者:堀内 稔

第243回 在日朝鮮人運動史研究会関西部会
10月13日(日)午後3〜5時
テーマ:「戦前、大阪で4回の総選挙に出馬した李善洪の生涯
 −アナキストシンパから大アジア主義者へ−」
報告者:塚崎 昌之

会場:青丘文庫(神戸市立中央図書館内)

<巻頭エッセー>

真の名 佐野 通夫

やがて、小屋の煙がすっかり消え去り、少年が再び口がきけるようになると、彼女はタカの真の名を甥に教えた。この名で呼べば、タカはまちがいなく、空から舞いおりてくるはずだった。(ル=グウィン作、清水真砂子訳『影との戦い ゲド戦記I』岩波書店、1976年、14−15ページ)
       *       *
 大学在学中に接した魔法使いの物語です。「真の名」ということばが在日朝鮮人の「通名」に接するとき、その他さまざまな機会に思い出されました。現在の社会には逆に「偽りの名」が満ちあふれています。
 2002年9月17日に小泉首相が北朝鮮を訪問することになっています。不思議なことは、日朝の国交回復という、日本が過去100年の間、朝鮮半島に対してどのようなことを行なってきたのか、ということを反省しなければならないときに、「拉致」疑惑云々が言われることです。最近有本惠子さんなる人物が主に登場していますが、「拉致」だと主張している人たちの話によっても、ロンドン留学後、自宅に「仕事が見つかる 帰国遅れる 恵子」という電報が届き、そしてヨーロッパを経由して、朝鮮に滞在しているらしいとの話です。この話がなぜ「拉致」なのでしょうか?「拉致」とは手もとの国語辞典では「むりにひきつれてゆくこと」とあります。英国の警察はそのような粗暴犯として事件化したのでしょうか。確かに朝鮮行きの背景には「北朝鮮工作員」の接触があったのかもしれませんけど、それがあったとしても、成人が自分の判断で、居住地、仕事を選択しています。これが「拉致」だというならば、アメリカ合州国に「拉致」されている日本人の方がはるかに多いはずです(人によっては「頭脳流出」という言葉が使われます)。
 同じように不思議なのは2002年9月4日の「不審船」騒動です。日本の排他的経済水域の外を共和国旗をあげて航行している船がなぜ「不審船」なのでしょうか。これも同じく日本近海にはアメリカ合州国や日本の「不審船」の方が多いはずです。
 姜徳相さんが言うように「拉致だというなら、日本が朝鮮人を強制連行してきた方がはるかに拉致だ」ということになります。しかしこれらの人々を「応徴士」なぞということばで展示説明を行なった平和資料館もありました。
 他にも不思議な名前はたくさんあります。法律婚主義をとっていて、夫婦関係の実態が破綻していても戸籍の届け出に従って夫婦を決め、子どもを決めるこの国で、なぜ「偽装結婚」なぞがありえるのでしょうか。法的に「婚姻届」を提出することこそが結婚だとするならば、届け出がある以上、「結婚」以外のなにものでもありません。
 ことばにだまされず、本質を探っていきたいと思います。(2002年9月11日記)

   +     +
 8月30日、小泉訪朝決定のニュースを聞いて、最初に思ったことが日本は共和国を買い取って新たな植民地にしようというのかということでした。17日は外務省がバスを仕立てての「拉致」家族作りに、18日の新聞は「8人死亡」の大見出し。朝日新聞の1面は政治部長の「痛ましい歴史越えて」の見出しの下、「どの国も『負の歴史』をおっている。過去の日本がそうなら、北朝鮮もそうである」として、植民地支配の責任と「8人」を交換しようとし、日朝平壌宣言は「1945年8月15日以前に生じた事由に基づくすべての財産と請求権を相互に放棄」してしまっています。そして既に朝鮮学校に対する嫌がらせが始まっています。(2002年9月18日追記)

第210回 朝鮮近現代史研究会7月14日(日)
書評「 Race to The Swift:state and finance in korean industrialization  /Jung-en Woo.  Columbia University Press 1991」( 従来の視点である韓国の経済発展の起源を朴正煕政権期にもとめるのではなく、植民地後期から李承晩政権期にかけてその基礎が築かれたとする論旨の図書)/報告者:堀添 伸一郎 (省略)

第241回 在日朝鮮人運動史研究会関西部会7月14日(日)
1947年からの朝鮮戦争 梁相鎮(省略)

【今後の研究会の予定】
11月10日(日、在日未定、近現代史・喜多恵美子)、12月8日(日、在日未定、近現代史・李正煕)、2003年1月12日、2月9日、3月9日。※発表ご希望の方は、水野または飛田までご連絡ください。

【月報の巻頭エッセーの予定】
2002年10月号(梁永厚)、以降は、文貞愛、藤井幸之助、金河元、高木、森川。※締め切りは前月の15日です。よろしくお願いします。

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神戸電鉄敷設工事朝鮮人犠牲者を調査し追悼する会/追悼会
10月27日(日)午前11時
モニュメント前、終了後、事故現場のひとつ烏原貯水池公園で
焼肉の会/要申込み、学生センター内、同会まで。
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<編集後記>

● ようやく秋らしくなってきた今日このごろです。いかがお過ごしでしょうか。毎回、旅行話ばかり書いている編集後記ですが、今回は、韓国安東仮面劇フェスティバルです。9月27日〜10月1日にいってきました。学生センター主催のツアーでメンバーは12名。仮面劇三昧の安東4泊でした。釜山から入りソウルからの帰国でしたが、そこに泊らず4泊とも安東でした。河回マウルもとてもグーでした。また在日のハルモニ2名もいっしょで、車椅子でいっしょに飛行機に乗るという体験もしました。関空も金海空港も車椅子であまり不便がないようにできていました。
● 花岡での強制連行集会にも9月に行って来ました。一度行ってみたかった花岡をたずねるとができました。これまでの集会に比べると遠隔地で、参加者は少なめでしたがいい交流ができました。堀内さんが『むくげ通信』9月号に簡単な報告を書いています。
● 天高く馬肥ゆる秋です。また勉強の秋でもあるようですが‥‥。いずれにしてもできるだけのんびりと暮らしましょう。(飛田雄一 rokko@po.hyogo-iic.ne.jp)

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