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青丘文庫月報・168号・2002月3月1日
図書室 〒650-0017 神戸市中央区楠町7-2-1 神戸市立中央図書館内
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郵便振替<00970−0−68837 青丘文庫月報>年間購読料3000円
※ 他に、青丘文庫図書購入費として2000円/年をお願いします。
ホームページ http://www.hyogo-iic.ne.jp/~rokko/sb.html
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●青丘文庫研究会のご案内●
第206回 朝鮮近現代史研究会
3月10日(日)午後3〜5時
テーマ:「朝鮮経済侵略一番乗り・大倉喜八郎」
報告者:梁相鎮
第237回 在日朝鮮人運動史研究会関西部会
3月10日(日)午後1〜3時
テーマ:「私の在日」
報告者:徐元洙
会場:青丘文庫(神戸市立中央図書館内、地図参照)
【今後の研究会の予定】
4月21日(日)(在日・松田利彦、近現代史・辛在卿)
※4月は14日が図書館休館日のため、21日に開きます。
<巻頭エッセー>
青丘文庫が朝鮮半島と日本との架け橋に 田部 美知雄
青丘文庫の存在は、韓晢曦さんが須磨に開設されたことを新聞で知り、一度、見学したいと思っていましたが、事前に予約が必要で、軽い気持ちでどんな文献があるのか見たいという興味本位で見学するのは研究者でもないので厚かましく手を煩わすのもはばかられ開設当初の青丘文庫を見学することはできませんでした。
淡路阪神大震災以降、青丘文庫は神戸市立中央図書館に移され青丘文庫の研究会も図書館で開催されているのを知り、図書館が身近な所でもあり、むくげ通信の催し欄を見て研究会に出席し青丘文庫を見学することがやっと達成できました。
現在、研究者でもないのに厚かましく研究会に参加しています。そして、通信の巻頭エッセーを書くのに悪戦苦闘しています。研究会では、いろんなテーマの報告があり、勉強させられることばかりですが、新たな視点を啓かさせられることも多々あります。研究会の参加者も多彩で、留学生や客員教授の参加もあり幅広い交流の場ともなり、この場を通じて人と人との輪が広がって行くことを期待しています。
淡路阪神大震災は、不幸な出来事でしたが、今後の社会の在り方を問う出来事でもありました。多くの人は支え合うということを学んだのではないでしょうか。でも、国が進めるものは、弱者切り捨てのグローバル・スタンダードであり、聖域なき構造改革であり、戦争の出来る普通の国に成ることです。また、経済的発展を求めた結果が、お金が欲しければ、人を殺してでも得ようとするような世に成るなんておかしいですよね。お金に振り回される世の中は近い将来、崩壊せざるを得ないでしょう。とはいっても、そのお金で多くの人が救われているのも事実です。使い方しだいでは、毒にも薬にもなります。
韓さん個人の資力を投じて出発された青丘文庫ですが、継続発展させるためには、新たに文献・資料を集収し、研究者の便を図って行かなければなにらないと思います。しかし、青丘文庫を利用している研究者の多くは大きな資力を持っているわけではありません。韓さんの「青丘文庫が朝鮮半島と日本との架け橋になればと思ってやってきた」との志を引き継いで行くためにも、趣旨に賛同する団体・企業から寄贈を受けることも必要ですが、書籍の購入資金を広く市民が支える文庫に発展して行けばと思います。月報を読んで懐に余裕の有る人は、図書購入資金を援助して下さい、知り合いに賛同してくれる人がいれば、声をかけてみて下さい。
そして、青丘文庫を活用した研究成果が、朝鮮半島と日本との架け橋になり、お互いの信頼関係を築いて行くことを期待しています。
第236回 在日朝鮮人運動史研究会関西部会1月13日(日)
日本人教師の在日朝鮮人認識を考える 佐藤典子(略)
第204回 朝鮮近現代史研究会2002年1月13日(日)
播磨造船所への強制連行−済州島での調査について−伊地知紀子
「朝鮮人労務者に関する調査の件」(厚生省 1946年6.7月作成、1990年8月公表=<厚生省名簿>)によると、兵庫県相生市にある播磨造船所には、2215名の朝鮮人が強制連行された。そのうち、済州島出身者は、218名。この名簿をもとに、2001年4月初に済州島で1週間をかけて、金慶海さん、門永秀次さん、高正子さんと私の4人で聞き取り調査をおこなった。春に御会いできたのは5名の方である。その後、9月に私が1人で追加調査を行い3名の方に御会いできた。
ここでは、いくつかの項目にまとめながら、8名の方のお話を紹介しておきたい。
<召集>
戸籍上満21歳を越えた人を対象とする年齢徴用だったが、生まれた年と戸籍上の年齢が違う場合もあった。召集時、知らされ方もいろいろである。白い紙に「誰それは徴兵制度何条によって応徴士にする」と書いてあったのを見た。召集令状は見ていないが、里長がみんなに話して行くことがわかったなど。済州島出発当時、中隊長をした梁さんによると、北軍と南軍に分けられ、その下を中隊・小隊に分けたという。
<播磨まで>
済州島から播磨までのルートは、現在の済州市にある港から、木浦へ行き、麗水から下関へ、そして播磨へというのがおおむねであった。途中、対馬に寄ったという答えもあった。
<播磨で>
・到着:播磨では分隊長となった梁さんによると、到着して20名単位で1個分隊に分けられ、約10個分隊で1個中隊になった。中隊長は徴集された日本人で、伍長だった。李さんによると、平壌の人たちは、自分たちより1週間早く来ていた。出身地別に全羅隊、平安隊と分けられたという。まず、訓練を受けたが、期間は15日間〜1ヶ月まで答えの幅がある。
・住居:「至誠寮」という木造2階建ての建物があった。棟数は、10棟〜4,50棟まで答えの幅があるが、敷地1つに20〜30棟という答えもあった。1棟に、100名程度。1部屋には10名〜30名とこれも幅があった。部屋は、同じ出身里の者同士で近隣の里が幾つか固まって1部屋に入っていたと夫さんはいう。
・食事:食事のひどさについてのお話は多く、出されたものは「豆粕の混ざった飯」、「米とキビと豆の混ざった飯」を、「サジでふた匙」。おかずは、海藻。あまりのひどさに、「器をみんな割っちゃったよ。ものすごく反抗して。食器をみんな壊しちゃったんだ」と権さんは語る。食事の時は、「そこの監督する人が指導員という一人の人が(韓国人)いて、これご飯をただ食べるのでなく、瞑目合掌(目をつむって)天照大神云々するんだね」。あまりのひもじさに、面会に身内が来てくれる人は小遣いで食べ物を買えたが、目の前の小川で「スッポン」をとって食べる人もいた。
・仕事:造船所は、銅工部・造機部・電気部に分かれていた。工場では、英米国の捕虜たちと一緒に働いた。
・給料:給料については、「もらった」という答えから「もらっていない」という答えまで、バラバラである。
<名簿との記載違い>
名簿上では、造船所を「退所」となっているのに実際は脱走した人もいた。脱走については、「その人らがその時から主張してたのは日本の警察は世界一だ、絶対に逃げれないって」、そう言われていたが1分隊で2、3名ずつ脱出したと梁さんはいう。他の部屋の脱走についても知らされることはなかった。また、解放後の退所時期もバラバラで、大阪に向かってから船に乗った人、播磨のある相生市から下関に向かった人などある。名簿には、「帰鮮手当」300円、「徴用慰労金」30円、「食料品(現品)」15日分支給とある。これらについては、誰ももらっていなかった。
以上が、聞き取りの概略である。どの方にも1回ずつしか御会いしていないため、聞き逃したことも多い。仕事については、どの方もとても辛かったようには話さなかった。北海道の炭坑に行かれた後、播磨に行った林さんは炭坑のしんどさを強調されていた。しかし、当時の「つらさ」を仕事のみで計ることに無理があるのだろうと思う。
生活はどうだっかたかという質問にたいして、「なに、そうして行った生活がどこにある」と答えられた夫さんの言葉のように、存在そのものが抑圧されていたなかでは、つらいとか楽だとかいえる状況ではなかっただろう。権さんは最後に、「今わしが悔しいのは植民地時代から内鮮一体といって、奴隷のように扱われて補償はひとつなく、ほんまに人が目を開けてみることができない境遇に合わせれたなあ。それでも堂々とうちらが1年間仕事した代価なけりゃならんとちがうか」と話された。
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神戸学生青年センター・朝鮮史セミナー
サンフランシスコ講和条約発行50周年
「在日朝鮮人問題の不条理な出立」(仮題)
講 師 竜谷大学教授 田中宏氏
日 時 2002年4月27日(土)午後2時
会 場 神戸学生青年センターホール
参加費 800円(消費税込)
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【月報の巻頭エッセーの予定】/2002年3月号(飛田)、以降は、李昇Y、本間、藤永、佐野、梁永厚、文貞愛、藤井幸之助、金河元、高木、森川。※締め切りは前月の15日です。よろしくお願いします。
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編集後記
(飛田雄一 rokko@po.hyogo-iic.ne.jp)