青丘文庫月報・162号・2001月9月1日

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●青丘文庫研究会のご案内●

第200回 朝鮮近現代史研究会
9月16日(日)午後1〜2時半
テーマ: 「植民地期の日朝スポーツ交流」
報告者:金 誠

特別報告/青丘文庫の金英達資料
9月16日(日)2時半〜3時半 金 慶 海

第232回 在日朝鮮人運動史研究会関西部会
9月16日(日)午後3時半〜5時
テーマ:「朝鮮戦争下の在日朝鮮人運動」
報告者:文 貞 愛

会場:青丘文庫(神戸市立中央図書館内、地図参照)

巻頭エッセー(お休みです)

第198回 朝鮮近現代史研究会
2001年6月10日
済州4・3と平和公園造成  趙誠倫(済州大学校社会学科教授)

 韓国現代史のなかで最も悲劇的な歴史として記録されている4・3事件は、この50余年の間、闇に葬られてきた。その間、辛い記憶を胸のなかに秘めながら沈黙を守ってきた遺家族と目撃者たちのうち、相当数がすでにあの世に旅立ち、残っている人々も年老いている。4・3の渦中に死んでいった英霊たちの魂を慰労する慰霊祭を執り行い始めて、すでに10年が過ぎる。その間、社会団体はもちろんのこと「4・3研究所」と済民日報社「4・3特別取材班」の真相究明への努力、そして道議会4・3特別委員会の被害者調査活動と名誉回復のための努力を受けて、ベールに覆われていた当時の実態と真相が明らかになりはじめた。そして1999年末、多様な努力が実り、真相糾明と名誉回復のための特別法が制定された。
 数多くの難関を突破して制定された特別法は、済州人たちがこの間奪われていた民主主義と人権の意味を取り戻しただけでなく、50年という歳月のなかで被害意識に抑圧されてきた、まさにその状況から抜け出る契機を準備するものなのである。そして、これに劣らず重要なことは、大韓民国が反共国家として済州道全域を血で染めた4・3を踏みつけて建設されたために、4・3の真相を糾明し犠牲者の名誉を回復することは、まさに反共イデオロギーを最優先とする大韓民国がイデオロギー対立から抜け出し、国民の生命と財産を大切に思う真正な民主国家として変身できる契機となるという点である。
 国会で通過した特別法によると、真相糾明作業と名誉回復作業を共に進行することとなっている。現在、名誉回復事業の全体的な構想が用意されていない状況で、公園造成事業のみをまず広げることには多くの問題がある。しかし、道当局が名誉回復の代表的作業として慰霊公園を造成する作業は、特別法に先立って推進されているため、それを中断して真相糾明作業が終わるまで待つことは無理がある。それゆえ、現段階で私たちに与えられた作業が4・3公園造成作業であるのならば、さしあたり公園をもっとも意味あるものとして作ることに尽力することが重要だと考える。この報告は、慰霊公園造成作業の基本方向を提示するものとして、名誉回復作業の具体的対象と内容、そして方向を整理してみようとするものであった。
 もちろん、この公園を造るといっても、それがすぐさま今まで不当な取り扱いを受けてきた人々の辛い記憶を、十分に理解し補償することを意味するものでは、決してない。しかし、十分ではないが、今私たちは、4・3を済州道住民の主体的歴史として、韓国現代史の価値ある経験の一つとして位置付ける作業を急がねばならない。そうして、この公園を訪問する済州人、韓国人はもちろん、世界各地から訪ねてくる人々が、済州地域で生きてきた平凡な人々の貴重な生活を、国家が不義に奪い取ってしまったという事実を先の50年間隠したまま、補償されることもなく、そのまま亡くなっていったという事実を知ることができなければならない。そして、数多くの住民が、ある朝連れて行かれ、人間以下の対応を受け、死んでいくしかなかった事情を直接体験せねばならない。そして、それらが国家暴力の残酷性と実状であることを直接目で見て、再びこのような国家暴力が再現されないようにしようと心に刻む契機が準備されねばならない。4・3公園が私たちが望むように建設されれば、公園こそが亡くなった人々のため、そして現在生きている済州人のための空間であるだけでなく、韓国社会全体、ひいては人類すべてに平和のメッセージを与えるセンターになるだろう。そして、このような歴史教育、平和教育の中心地としてひときわ高くそびえたつとき、初めて歴史文化観光の中心地になることができるのであり、既存の観光概念を全面的に変える済州市、そして済州道の象徴として位置付けられるといえよう。(記録/伊地知紀子)

第231回 在日朝鮮人運動史研究会関西部会
2001年6月10日(日)
韓国法と日本法の比較 朴洪圭(嶺南大学教授)

 日本には韓国法を研究する学者がいない。逆に韓国では日本法の研究は行われていない。今、日本と韓国にはこうした現状があることを指摘しておきたい。
 韓国法と日本法を比較するにあたって、いくつかの危険性があることを指摘しなければならない。
 まず、韓国法と日本法を西洋法の次元でだけ検討し、否定的に見るオリエンタリズム傾向は止揚しなければならない。逆に、韓国法や日本法の特殊性を過度に強調し、肯定的に見ようとする逆オリエンタリズム的現象も、韓国法や日本法の方向を誤って導く可能性がある保守的傾向の危険性をはらんでいる。
 植民地時代に日本の法律が強制されたが、その法律については韓国では「悪い」の一言でかたづけている。しかし、現在の韓国法の大部分は、植民地時代の法律をそのまま継承したものである。このような民族主義的センチメンタリズムで、現在の韓国法の根っことなっている植民地時代の法を否定することは、危険な発想である。
 また、韓国法の根を朝鮮前後に本格的に成立する儒教法としてだけ見る現象も問題である。韓国法は2千年以上の伝統を持つものであるから、その全体を鳥瞰する態度が必要であり、朝鮮時代の儒教法の正確な理解も必要である。
 最後に法の継受という形式の問題でもって法の内容まで判断する危険性が指摘されなければならない。法の継受は文化移転の一つであり、それは弾力的、または全面的になされるが、その差自体が法の内容を決定するのではなく、必要や状況によりその形態を取るのにすぎない。しかし日本では、文化を弾力的に取り入れる日本に対し、朝鮮は民族性ないし儒教の影響で教条的になされるとする偏見が根深い。これは事実と異なる。
 こうした危険性をふまえたうえで、韓日現代法の内容上の特殊性の議論、法継受での特殊性比較議論がなされなければならない。
 たとえば韓国では、民族主義という美名のもとにその特殊性が強調される傾向がある。民法の伝貰(チョンセ)や伝統的な家族制度の特徴的な側面を強調しようとする傾向である。しかし、このような独自性を強調する見解は、法の普遍性を無視する傾向に流れる可能性が高く、したがって、独自性の強調はあくまでも普遍性を前提とするものでなければならない。
 日本では、韓国現代法の特徴として儒教的伝統、派閥主義、分断国家制、反日主義を強調する見解がある。しかし、儒教的伝統に対する強調は韓国法を正しく理解できないところからくる結果である。地域主義は韓国社会の問題点の一つではあるが、それが法に現れることは全くない。反日主義も日韓間の国交正常化次元では見ることができても、国内法の次元では直接現れることはない。(記録/堀内 稔)

【今後の研究会の予定】
10月14日(日、在日・洪祥進、近現代史・金慶海)
11月11日(日、在日・佐藤典子、近現代史・堀内稔)、12月9日(日)

【月報の巻頭エッセーの予定】

2001年10月号(浅田朋子)、11月号以降は、金森、金慶海、坂本、伊地知、田部、飛田、李昇Y、本間、藤永、佐野、梁永厚、文貞愛、藤井幸之助、金河元、高木、森川。

※締め切りは前月の15日です。よろしくお願いします。

編集後記

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