青丘文庫月報・161号・2001月7月1日
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第199回 朝鮮近現代史研究会
7月8日(日)午後3〜5時
テーマ: 「満州国における朝鮮人『親日派』−『民族協和』と『内鮮一体』との矛盾のなかで」
報告者:廣岡 浄進
第232回 在日朝鮮人運動史研究会関西部会
7月8日(日)午後1〜3時
テーマ:「戦争下の生野キリスト教会」
報告者:及川 ひろ絵
会場:青丘文庫(神戸市立中央図書館内)
巻頭エッセー
修正要求は「内政干渉」か 姜在彦
いわゆる「つくる会」の歴史教科書問題で、私がもっとも残念に思うのは、来年のサッカーW杯の日韓共催に向けて、せっかく盛りあがってきたよい雰囲気に水を差したことだ。もちろんこれ位のことで、日韓共催に支障が出るとは思わないが。
しかし「つくる会」の教科書が137ヶ所の検定意見を受け入れて(このことだけでも教科書としては失格と思うが)検定合格したことは、1982年に韓国から中国へ、さらに東南アジアまで広がったアジア諸国の批判から、何ら教訓を汲みとってないという不信感は残る。しかも「つくる会」の教科書は「新しい歴史教科書」どかろか、1982年に問題になった教科書の内容よりも、さらに改悪されている。
周知のように韓国政府は去る5月8日、扶桑社の検定合格本にたいし25項目、他の7社の教科書にたいし10項目、合わせて35項目の修正要求を提出した。
また中国政府も5月16日の覚え書で、とくに扶桑社の教科書にたいし8項目の修正要求を申し入れてきた。
「つくる会」の教科書をサポートするマス・メディアは、これを「内政干渉」として反発している(例えば『読売新聞』5月9日の社説「韓国の修正要求は内政干渉だ」など)。
「つくる会」の歴史教科書は、いうまでもなく日本史が中心であり、それとの関連で韓国や中国の部分が付け加えられている。日本史そのものの内容にもいろいろな問題があるが、それは日本史学界内部で解決するべき問題であろう。
韓国政府が提起した35項目の内容をみると、日本史そのものの内容には一言もふれず、韓国史と日本史との関連部分に、きびしく限定している。中国の「覚書」8項目もそうだ。
とりわけもっとも問題の多い近代史部分における関連史については、単純に考えても、明治期以来の日本の侵略と加害の歴史を抜きにして韓国近代史は書けないし、日清戦争によって台湾を切り取り、満州事変以来15年間の日本の侵略と加害の歴史を抜きにして中国近代史は書けない。
果たして「つくる会」のかれらに、自国の歴史を美化するため近隣諸国の歴史を歪曲し、おどしめる権限があるだろうか。それにたいする異議申し立てが、どうして「内政干渉」なのか。
少なくとも教科書検定に責任をもつ日本政府は、せめて「近隣アジア諸国に関する近現代史の歴史的な事実には、国際理解と国際協調の見地からの必要な配慮をする」といった1982年の公約―つまり「近隣諸国条項」を誠実に守ることによって、教科書紛争の悪循環に終止符を打つべきではないだろうか。
第197回 朝鮮近現代史研究会2001年5月13日
延辺の土地革命 金森襄作
延辺の公有地改革(分配)は、今日まで1946年3月20日の中共東北局指令「公有地暫定方法」に基ずいて行われたと言われてきたが、実際は2月7日の延辺地方委員会(党)が独自に先行的に決定した「公有地処理条例」に基ずいたものである。具体的には、8月末から12月初に遂行されたが(8.2万町歩)、「公有地」とは集団移民地・自作農創生地など、土地購入資金を東拓、満拓、県から融資を受け、返済途中にある土地で、小作地ではない。言うなれば、新日本人として日帝から優遇された朝鮮人農民の資金返済をなくし、その土地所有権を認定するもので、開放直後に結成された延辺党幹部の意向に沿って遂行されたといえる。
延辺での朝鮮人の在住を法的に認定したものの、土地革命(小作農開放)遂行を阻害する側面も持ち、中共延安派幹部は、中共「土地問題に関する指示」、8・28東北局同指示に基ずき、公有地分配作業途中に別途に土地革命の準備をせざるをえなかった。11・21「半生半塾問題に関する指示」として1947年初から具体化したが、7月までの第一段階では、大衆の中に入らない幹部と、階級意識の薄い小作農などによって、一部食料貸付と青苗分配程度しか実施できなかった。そこで、徹底した右傾幹部批判と官僚主義批判を行い、47・7−10の第二段階「大物を打ち隠した財産をあばく運動」に、突入し、半強制的に地主地、分配した公有地の再分配を強行し、併せて糧食供出、入隊、参軍工作も遂行していった。地主、富農はほとんど没落したが、機械的、極左的で、十分農村で、党組織が組織化できず、しかも分配地の不平等もあって、10・10「中国土地法要綱に基ずく第三段階(47・11−48・4)、即ち、徹底した平均的土地分配作業を行っていき、完了させた。しかし、中農も没落し、農村での生産意欲と生産高減少も現れ、6月から「中農利益の回復」(15%)を図ろうとしたが、これは成功しなかった。
かくして、土地革命は完了し、農民の平均的所有となったが、分配面積は一人当0・34町歩、一戸あたり。56町歩と、元々耕地面積が少なく、土地革命即農民生活向上とはならず、早々合作社・人民公社へと移行せざるを得ない、土地問題の困難性も内在していた。
第230回 在日朝鮮人運動史研究会関西部会2001年5月13日(日)
朝鮮人強制連行の実数について 飛田 雄一
朝鮮人強制連行の実数については、不確かなことが多い。最近私は、『日朝条約への市民提案』(明石書店、2001.6)の強制連行の項目を書くことになって、朝鮮人強制連行に関するこれまでの記述をあらためて読みなおしてみた。そこで気づいたことは朝鮮人強制連行の実数に関する記述がほとんどないということである。中国人強制連行の場合には『外務省報告書』によってその実数が明らかにされているのに比べると大きな違いがある。1980年5月のノ・テウ大統領大統領訪日の際に約束した「名簿探し」の結果、「発見」されたいわゆる朝鮮人強制連行者に関する「厚生省名簿(1946年)」によって16府県、66,941名の名簿が明らかとなったが、それはおよらく1946年当時に行なわれた厚生省による調査の一部に過ぎないものである。
今回の報告では、この不確かな朝鮮人強制連行の実数に迫るための方法を提案した。それは、内務省等の全国的な数字を研究する方法ではなくて、全国の事業所ごとの強制連行者数を、都道府県単位にできるかぎり資料にもとづいてカウントし、最終的にそれを集計しようとするものである。
私は、以下のような原則を決めてみた。
そして、このカウントプロジェクトのための模範?を示そうと、兵庫県について一覧表を作成した。兵庫県の朝鮮人強制連行に関する文献を網羅的に集め(比較的研究が進んでいる兵庫県の場合でも文献数は限られている)、先に述べた「原則」のもとに表を埋めていった。兵庫県は総数で66,941名の「厚生省名簿」の中で最も多い13,477名となっており、このような一覧表が作りやすい条件となっている。一覧表を作成してその「最少」「最大」をカウントしてみると、それぞれ、17,399、21,383となる。
今回提案するプロジェクトは統計数字から実態に迫ろうという方法ではなく、事業所ごとの連行者の数字から実数に迫ろうとする方法である。いずれその方法によって全国的に積み上げられた数字と全国的な統計数字とを比較検討し、朝鮮人強制連行の実態により近づけるようにしたいものである。今年9月8〜9日、大阪・茨木市で開かれる「強制連行調査ネットワークの集い」でも、この提案を行なって全国の仲間とともにこの作業を進めて行きたいとおもっている。
兵庫県の一覧表も含めて詳しくは、拙稿「『朝鮮人強制連行実数カウントプロジェクト』の提案」(『むくげ通信』185号、2001.3)を参照していただきたい。
【今後の研究会の予定】
2001年9月16日(日)(在日・文貞愛、近現代史・金誠)※要注意、9月は第3日曜日です。
10月14日(日)、11月11日(日)、12月9日(日)
【月報の巻頭エッセーの予定】
2001年9月号(浅田朋子)、10月号以降は、金森、金慶海、坂本、伊地知、田部、飛田、李昇Y、本間、藤永、佐野、梁永厚、文貞愛、藤井幸之助、金河元、高木、森川。
※締め切りは前月の15日です。よろしくお願いします。
編集後記
(飛田雄一 rokko@po.hyogo-iic.ne.jp)