青丘文庫月報・150号・2000月6月1日

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 ●青丘文庫研究会のご案内●
第188回朝鮮民族運動史研究会

6月11日(日)午後3〜5時
テーマ:「「三国人」という言葉の起源――新聞・議会議事録から考察する――」
報告者:水野 直樹
第224回 在日朝鮮人運動史研究会関西部会
6月11日(日)午後1〜3時
テーマ:文化財保護法による「戦跡保存」―強制連行遺跡との関連で―
報告者:飛田 雄一
会場:青丘文庫(神戸市立中央図書館内、地図参照)

巻頭エッセイ
「第三国人」というコトバ、余聞 廣岡浄進

月報が出るころには既に二ヶ月近く経っている計算になるのだが、石原慎太郎の「三国人」発言(その一言一句は毎日新聞がインターネット上での閲覧に供している)にちなむ話をしたい。もっとも、種々の抗議声明によって彼の事実認識・歴史認識の誤りは指摘されているし、やや遅れて朝鮮史研究会も批判声明を出している。また、内海愛子・高橋哲哉・徐京植が編者となって『石原都知事「三国人」発言の何が問題なのか』という本が、6月に影書房から出されるそうである。ここでは、わたしの近くの学生たちの反応について、気になっていることを記したい。
 阪大民受連(民族学校出身者の受験資格を求める阪大連絡協議会)にわたしが関わっていることは、以前この欄でも紹介した。来る6月7日(水)に田中宏さんを講師とする公開学習会「外国人は『必ず騒擾を起こす』のか?」を開くため、その準備として先日内部学習会を持った(学習会では、石原発言にどのような批判が提出されているか、「第三国人」とはどのような背景を持った言葉であるか、について報告した)。聞いてみると、在日朝鮮人学生でも「第三国人」というコトバを知らなかったのだという。それゆえかどうかは定かではないが、あの発言自体には特段の怒りも憤りも感じなかったようである。この運動に関わって4年目になるある在日の学生が、石原発言そのもの(「釈明」記者会見を含め)に目を通して開口一番発したのは「いやあ、おもろいですね」であった。
 確かに発言の内容自体は事実誤認に満ち、あまりに愚劣で、笑ってしまうような代物ではある。それに、「あるべき」被差別者らしさを、現実の彼らに求める愚かしさは自覚しているつもりである。それでも、妙に引っ掛かりを残す。この発言に誘われてか、日本人学生の中からは「もっと(石原に)しゃべらせてみたい」という声も出てきた。さすがに他の参加者から突っ込まれていたが、この両者に共通して見られる(ように思う)当事者としての感覚の弱さ・希薄さは、いったい何なのであろうか。ある種の強がりであるだとか、偽悪的な振る舞いだとかという形での回避的反応はあり得るとしても、である。
 これに限らず、「身近にいる在日の学生が深刻に受け止めていない(みたいだ)から」と、それ以上の思考をせずにすまそうとするケースはおそらく、かなり多いであろう。けれども被差別者一個人の発言に全体を代表させ、それを唯一の判断基準とすることもまた差別であることは、言うまでもない。
 生身の感情が伴わないステレオタイプを引き受けない/引き受けさせないで、個々の実感に根ざした関係を構築することの今日的難しさを思う。怒る、憤るにも、訓練が必要なのかもしれない。

毎日新聞による石原発言全記録
http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/details/ishihara/hatsugen09-1.html
石原発言に対する抗議文アーカイブ(「反ひのきみネット」内)
http://www.jca.apc.org/anti-hinokimi/archive/ishihara/index.html
朝鮮史研究会の石原発言批判声明
http://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~mizna/database/sengo/seimei.html
松葉祥一(神戸市看護大学)の的確な批判
http://www.linelabo.com/isihara1.htm

第223回 在日朝鮮人運動史研究会&第187回 朝鮮民族運動史研究会
5月14日(日) 大津市でのフィールドワーク
−宇治川水力発電所水路、大戸川発電所などを見学(報告は、次号の月報で)

訃報

青丘文庫研究会のメンバーであった金英達さんが亡くなられました。姜在彦先生の追悼文を掲載させていただきます(『民団新聞』5月17日)。次頁のとおり偲ぶ会を開きます。ご参加いただければ幸いです。

金英達さんを偲ぶ会・ご案内

私たちの友人の金英達さんが去る4月25日、尼崎市で亡くなられました。研究者として優れた才能をもった彼の死は、本当に残念でなりません。彼が生前属していたいくつかの研究会の代表者が呼びかけて下記のとおり「偲ぶ会」を開くことにいたしました。今はなき金英達さんのことを語りあい、またそれが新たな出会いとなるような「偲ぶ会」となればと願っています。
 ご多忙な時節と存じますがご参加いただければ幸いです。

日時 2000年7月23日(日)午後3〜5時
会場 神戸学生青年センター
(阪急六甲下車、北東徒歩2分、TEL078-851-2760)

呼びかけ人
徐根植(兵庫朝鮮関係研究会代表)
飛田雄一(神戸学生青年センター館長)
堀内稔(むくげの会世話人)
水野直樹(青丘文庫研究会代表)
梁永厚(在韓華僑研究会世話人)※50音順

連絡先/〒657-0064 神戸市灘区山田町3-1-1 (財)神戸学生青年センター内 飛田(ひだ)
TEL 078-851-2760 FAX 821-5878 E-mail rokko@po.hyogo-iic.ne.jp

月報の巻頭エッセー

7月号(金森襄作)、9月号(佐野通夫)、10月号(休刊)、11月号(水野直樹)、12月号(坂本悠一)、2001年1月号(李景a) ※ 前月の20日までに原稿を飛田までお寄せ下さい。

編集後記

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